金魚姫[ 前篇 ]

 

 それは、海の近くの、とある国の物語。



 深い深い海の中の、ルカ王国。

その国の王女、金魚姫はいつも地上の世界に憧れを抱いておりました。

金魚姫    「あーぁ・・・海の中ばっかりも退屈ッス・・・ブリッツも遊び飽きたし・・・」

金魚リュック 「ねぇねぇ!地上が大嵐だよっ!!どっかの船が沈みそうになってるぅ〜!!」

金魚姫    「なんだって!!助けにいくッス!」

 金魚姫と仲間達は、地上に向けて泳いでいきました。

 海面にあがると、大きな船が波に揺られて今にも沈んでしまいそうです。

 その時、

従者キノック 「あぁっ!!王子様ぁぁぁぁぁ!!!」

 人影が船上からグラリと揺れ、水面に落下してゆきました。

 大変です!船から誰か落ちてしまったようです!!

金魚姫    「大変だ!誰か落ちたッス!!」

 金魚姫はあわてて水中に潜ると、沈んでゆく影を必死で追いかけました。

 ようやく追いつき、その身体を抱きとめると、地上に向かって一生懸命泳いでゆきます。



 何とか地上に浮き上がると、波打ち際の岩場までその身体をひっぱりあげました。

金魚姫    「・・・だ、大丈夫かな・・・?」

 恐る恐るその顔を覗き込むと、金魚姫は思わずはっとなり、息を呑みました。

金魚姫    「・・・か・・・かっこいいッス・・・・vv」

 丹精な顔立ち。

 薄らと伸びた髭。

 片目に残された大きな傷痕。

 そして、波に揉まれ乱れた衣服の隙間から覗く綺麗な鎖骨。

 何もかもが、金魚姫のモロ好みだったのです!!

金魚姫    「・・・ごく・・・」

 相手が気絶しているのをいいコトに、金魚姫はそっと唇を寄せようと、顔を近づけました。

???    「・・おぉっ?なんかあそこに人影があっぞぉ!!」

金魚姫    「やべっ!」

 その大声に、金魚姫は慌てて海の中へ舞い戻りました。

従者ワッカ  「姫!!危ないですから・・・」

姫      「あぁん?オレ様を誰だと思ってんだ!」

従者ワッカ  「・・・だから姫ですって・・・」

 姫は従者の言葉など一向にお構いなしで人影に向かって歩いていってしまいます。

姫      「・・・おぉっ!!」

 倒れている男の姿を見た姫は、猛ダッシュで駆け寄りました。

姫      「・・・こいつぁ・・やべぇぜ・・・」

 どうやら姫にとっても、この男はモロ好みなようでした。

姫      「おい!こいつを城に連れてくぞぉ!!」

 従者に向かってそう叫ぶと、倒れた男をがっしと抱き上げ、またもや猛ダッシュで走り去ってしまいました。

金魚姫    「・・・あぁ・・・あのひとは一体・・・誰ッスか・・・」

 奪われた愛しい男が連れ去られるのを、金魚姫は涙ながらに見送ったのでした。



 海のお城に帰ったあとも、金魚姫はあの男の人のことが忘れられません。

金魚姫     「・・・あぁ、また逢いたいッス・・・・」

 金魚姫は大きな溜息を吐きました。

金魚姫     「いっそのコト、人間になっちゃえばちゃんと会えるかな・・・?」

 その時、城の中が急に闇につつまれました。

???     「・・・ふふふ・・そんなに人間になりたいのですか?」

金魚姫     「だ、誰ッスかっ?!」

 その暗闇の奥から、青い光に包まれた姿が見えます。

 頭には大きな三本の触覚が生えていました。

魔女      「私はこの海の魔女・・・・貴方の願いを叶えて差し上げましょう・・」

金魚姫     「ま、魔女・・・?願いを叶える・・・?」

 そのアヤシイ風貌に、金魚姫は疑いの眼差しを向けています。

金魚姫     「第一、ヒトの家に勝手に入ってくるなんて、アヤシサ度数100%ッス!!」

魔女      「おや、失礼・・・我々魔女は、金魚のニオイに敏感なもので・・・」

 益々アヤシイだけではないか?と思いつつ、金魚姫は先程の魔女の言葉が気になっていました。

金魚姫     「願いを叶えるって・・・ほんとッスか・・?」

魔女      「えぇ、本当ですとも・・・・・但し・・・」

 きました!!

 おとぎばなしの鉄則、『交換条件』です。

魔女      「貴方の、その『髪』をいただきます」

金魚姫     「・・・へ?『声』じゃないの?」

 密かにジェスチャーの訓練をしていただけに、金魚姫はちょっぴりがっかりです。

魔女      「そんな少年声、戴いても嬉しくありませんので・・・」

 確かに。

魔女      「さぁ、どうしますか?」

金魚姫     「・・・・えぇと・・・うぅ・・・」

 金魚姫が迷うのも無理はありません。

 なんでわざわざハゲにならなくちゃいけないのでしょう?

金魚姫     「なんで髪の毛なんだよ!!声じゃダメッスか?」

魔女      「私のシュミですから」

 マニアな趣味だな、と思いつつ、金魚姫には決断の時が迫っています。

金魚姫     「・・・・・・わかったッス・・・」

魔女      「では、成立ですね?」

 よって、ここに金魚姫と魔女の契約が交わされました。



 その頃、地上では・・・・

姫       「おぅ!!よかったなぁ元気になって!」

王子      「・・・あぁ・・・その・・世話をかけたな・・」

姫       「なぁに、隣の国のよしみってヤツよ!」

 あの時、金魚姫が助けたひとは、そのままあの姫に看病され、すっかり元気になっていました。

 何しろ、先進王国ザナルカンドの医療技術は驚く程進歩しているのです。

王子      「そろそろ国に帰らないと、父王が心配するので・・・」

 そう、そしてこの金魚姫の想い人は、スピラ王国の王子様だったのです。

姫       「あぁ?そうなのか?もちっとゆっくりしてけって!!」

 そう言いながら、王子はベッドに押し戻されました。

王子      「い、いやもう・・・こ、こら!何を脱がしてるんだっ!!」

姫       「まぁまぁ、細かいことは気にすんな!!」

 細かいことでしょうか?

王子      「おい!どこ触って・・・・・ぁ・・っ・・!」

姫       「おぉっ?感度いいねぇ・・」

 あれよあれよと言う間に、交渉は成立(笑)してしまった模様でした。



 王子さまも意外と小慣れているようですね・・・・うふv



 その頃の金魚姫は、ザナルカンド王国の地に恐る恐る降り立っていました。

金魚姫     「・・うっわー・・歩くってバランス大変ッスね・・・」

 慣れない『足』でふらふらと歩きながら金魚姫は城に向かって歩き出します。

 その視線の先に、力無く歩くシルエットが映りました。

金魚姫     「・・・あぁっ!!あれは・・・っ!!」

 その姿は、紛れも無く金魚姫の恋焦がれたひとだったのです。

王子      「・・・・酷い目に遭った・・・」

 ようやく姫の元を抜け出すことのできた王子は、疲れた身体をリフレッシュさせようと、海岸に散歩に来ていたのです。

金魚姫     「・・・運命ッス・・・・」

 ガッツポォズを作りながら、金魚姫は王子の方へ慣れない足を向けました。

王子      「・・・・ん?・・・キミは・・?」

金魚姫     「・・・あのっ・・・お身体は・・・ダイジョブッスかっ?!」

 緊張のためなのか、金魚姫の言葉はイントネーションが狂っているようです。

王子      「・・・なんの・・・話だ・・?」

金魚姫     「・・・その・・アナタを・・・海岸まで引っ張りあげたのは・・・オレッス!!」

王子      「・・・そうか、キミが・・・・助かったよ」

 王子の柔らかい微笑みを見た金魚姫は、もう心臓が銀の矢に貫かれたようでした。

王子      「何かお礼をせねばならないが、ここは他国・・・・」

金魚姫     「そそそそそそんな、おれおれおれおお礼なんて・・・っ」

 金魚姫のカツレツは妖しさ極まりないに違いありません。

王子      「キミさえ良ければ、俺の国まで来るか?そうすれば少しは望みのものが・・・」

金魚姫     「・・・は、はいぃ!!」

 王子の国までの旅路で、少しでも一緒にいられることを瞬時に考えた金魚姫は、二つ返事で応えました。



姫       「・・・何ぃ?帰るだぁ?」

王子      「世話になったな、俺を助けてくれた恩人も見つかったので、一旦国へ戻ることにした」

 姫のこめかみがヒク、と引きつります。

姫       「・・・・っしゃぁ!!オレ様も行くぜ!おい嫁入準備だぁ!!」

王子      「か、勝手に嫁に来るなぁ!!」

 王子の抗議も虚しく、姫は荷物を纏め上げると、楽しそうに王子や金魚姫と共にスピラへ向かったのです。



王子      「・・・そう言えば、名前も聞いてなかったな・・・?」

金魚姫     「・・・へっ?オレッスか・・・?」

 金魚姫はドキリとしました。

 何しろ、金魚の自分にひとのような名前はありません。

 生まれた時から『姫』と呼ばれ続けて、他の呼び名も思いつくはずもないのです。

金魚姫     「・・・その、実は・・・オレ・・・自分のコトが・・・ワカんないッス・・・」

王子      「・・・なんだって・・・」

 咄嗟にでた嘘でしたが、金魚姫はこう応える以外に思いつきませんでした。

王子      「・・・では・・・『ティーダ』・・・と呼ぼう」

金魚姫     「・・・ティーダ・・?」

王子      「そう、『太陽』という意味だ・・・その輝く綺麗な髪に相応しいと思って、な・・・」

 そう言いながら、王子は金魚姫の髪に手を伸ばしました。

 ですが、その瞬間・・・

金魚姫     「ダメッス!!!」

 慌てて金魚姫はその掌を払いのけてしまいました!

王子      「・・・・・・・・」

金魚姫     「・・・あ・・・・・・」

王子      「・・・・・すまなかった・・・・」

 一瞬、暗い表情をした王子は、金魚姫から離れていきました。

金魚姫     「・・・王子・・・すまないッス・・・」

 そうです。

 金魚姫は魔女との契約に基づき、足の代わりにその『髪』を差し出してしまったのです。

 今の金魚姫は、所謂『ヅラ』だったのでした。



 金魚姫の脳裏に、魔女の言葉が甦ります。

魔女      「その『ヅラ』がバレた時、王子がアナタを嘲笑った途端、アナタは海の泡になります」



金魚姫     「・・・これだけは、バレる訳にはいかないッス・・・」



 スピラ王国は、もう目の前でした。


[後編へ続く・・・]






scince 26 Apr.2002









なんだこりゃ(笑)
そう、笑えるひとだけ笑ってください

ビバ!七海ちゃん!!

 

 

 

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