講習
ゆめ さま/ NOGさま |
「おい、ジェクト!その・・・教えて欲しいんだが・・・」 唐突に目の前に立ちふさがったアーロンを、ジェクトは口を開けて眺めた。 ここ、スピラに迷い込んで、ブラスカのガードになって約1ヶ月。10才も年下のこの男に怒鳴られることはあっても、頼まれたことなど1度もない。アーロンは、ガードとして非常に優秀で、おそらく一人でも十分に召還士を守れるだろう。その男に教える事など自分にあったか・・・? 「女?」 「馬鹿っ」 口と同時に拳が飛んでくる。 「ってぇ!じゃー、なんだよ」 「だから、お前の得意なアレだ」 アレ・・・?って、やっぱアレ? 「アーロンちゃんたら、意外と大胆〜。まー、いいけどよ。んで、ちったぁ経験あんのか?」 「いや。あんまり・・・」 途端に、頬を染めて横を向く。その反応に俄然やる気が出るってもんよ。 「そーか、そーか。まぁ、俺様にまかせなさい」 胸を叩いて約束すると、すがるような目で見上げてくる。たまんねぇ・・・。 「で?今からか?」 「ああ、ブラスカ様も寺院の接待を受けられている。半日は戻られないだろう」 「よしっ!じゃ部屋行くか」 「え?部屋でするのか」 怪訝そうな顔。外でってか?こいつ、大胆過ぎねぇ?ま、そういうのも嫌いじゃねーけど。 「んじゃ、好きなトコ連れてってくれよ。この辺は南国だからな。俺ぁ、どこでもいいぜ」 にやりと笑うと、少し困ったように目を伏せる。 「ジェクト・・・」 少し掠れた声で名前を呼ばれて。 あーもう、ここでいいや。 アーロンの手を取り、近くの木陰に引っ張っていく。ビサイドの甘ったるい花の匂い。少し湿った空気。日差しが強い分、影は濃く、背の高い樹木が二人を隠す。 「ジェク・・・!」 名前を呼びかけたところで、唇を塞ぐ。初めは啄むように。 「んっ・・・」 少し苦しそうか?でも、しっかりと腰を抱き寄せて離さない。よく覚えられるように、ことさら丁寧に唇を舐める。大振りの花よりも赤い首筋。誘ってんだよな。ほら、花って虫を、子孫繁栄のために誘惑してるわけで。まんまと罠に引っかかるのも、悪かねぇ。 唇を移動させようとしたとき、ガツン、と脳に直接響く衝撃に襲われた。 「・・・・くそっ、モンスターか!」 けれど、魔物の陰は見あたらず、痛む頭を撫でながらアーロンを見ると・・・・・あり?怒ってる? 「今、殴ったの、オメェか」 「そうだ」 「てめぇ、人にものを頼んどいて、いー態度じゃねぇか!」 凄んでやると、やや反省したようだな。あたりめーだ。 「す、済まない。でも、あんたが、あんなことするから・・・」 「教えろって言ったの、アーロンだろ」 「・・・・あれ・・・も、練習なのか?」 「おう。ステップ1だ」 しばらく考え込む。こいつは、どーして、いちいち悩むかねぇ。 「まかせろ、って言ったろが。こういうのは体で覚えんだよ!ったく」 「・・・・・わかった」 大人しく身を寄せてくる。 「んじゃ、ステップ2な。って、もっと楽にしろや」 あまりのカチカチぶりに、苦笑がもれる。何故アーロンが、こんなことを覚えたいのか少し疑問に思ったけれど、お年頃ってやつ? 「・・・まかしとけ・・・」 低く囁くと、びくっと揺れる耳。ぺろりと舐める。 「・・・・はっ・・・」 上着をはだけさせ、首筋から胸元へと舌を運ぶ。 「ジェ・・・ジェクト。これは一体・・・・なんの練習・・・・だ」 布の上から、下半身を撫で回す。感じてるのが分かる。 「・・・ぁっ、ジェクト・・・」 ウエストから手を忍び込ませ、勃っているものを包みこみ・・・。 「ジェクトっ!」 「うるせぇ、黙れ!アーロン!なんだってんだ」 「・・・これで泳げるようになるのか?」 熱で潤んだ目で、聞いてくる。 「・・・・・・・・・・・」 「その、水の中じゃなくて・・・いいのだろうか?」 あー、泳ぎ・・・。エッチじゃなくて・・・。 「ジェクト?」 固まってしまったジェクトに不思議そうな目を向ける。悪いことを言ってしまったのだろうか、と考えているらしい。 「ああ、泳ぎね。・・・できるともよ。まず息を止める練習をしてたわけだな」 「じゃ、じゃあ、その、下半身は・・・」 「力を抜く練習」 おいおい、信じてるよ、こいつ。頷くなって。それより、この盛り上がった体はどーすれば・・・。 ・・・よし!続きは水中で。引きずり込めば、こっちのもん。 すまねぇ、アーロン。ごちになります。駄目だとか言いやがったら沈める。 決意も新たにアーロンの肩に手を回す。 「んじゃ、海、行くか」 「ああ」 嬉しそうに微笑むアーロンに、ドキっとする。 優しく、するから・・・・・。 まっすぐなアーロンに、少し後ろめたいジェクトだった。 「アーロン。暴れんなよ、まだ足つくだろ」 「・・・ああ」 落ち着いてるのは口だけ。胸までの水深しかないのに、馬鹿力でしがみついてくる。 バタバタともがくから浮かねぇんだっての。剣技だって格闘だって一流なのに、なんでだ? 必死な顔。 ずっと絡まれて襲うヒマもありゃしねぇ。 蒼く澄みきった海。照り返る日差し。アーロンと二人。 絶好のシチュエーションなのにな。いっそのこと、マジで沈めちまうか・・・。 「・・・ジェ・・クト・・・」 やべ。青い顔してる。 「少し休憩すっぞ」 腕を引きずり、浜辺へ戻る。よほど疲れたのか、アーロンはぐったりと座り込んだ。 「おめぇ、その服脱げ」 「・・・だが、装備を外しては、水中でブラスカ様をお守りできん<」 やっぱ、ブラスカのためか。まー、わかっちゃいたがな。 「あのよー、まず普通に泳げるようになってから言え。そういうことは」 アーロンは赤くなった。焦っていることは自覚していたのだろう。 「わかった・・・。この辺りは船が使えるが、先に進めば水路もあると聞く。お前一人、戦わせるわけにはいかないからな」 アーロン? 「俺も守りたいんだ。あんた達を」 今すぐ、押し倒してぇ・・・。いや、待て。焦っても、こいつは強ぇ。じっくりいかねぇと・・・。 「ジェクト。俺、昔は泳げたんだ」 「へ?」 「小さい頃、シンが通ったために津波が発生した。俺は一人で海岸で遊んでいて流されてな。たまたまそばにいた大人が、大きな木に俺を掴まらせて、自分は波にさらわれていった。・・・それから、駄目なんだ」 ああ、そっか。こいつは、水が怖いんだ・・・。 でも、水中で誰も守れない自分は、もっと怖いんだ。 「わかった。じゃ、続きやっから、とりあえず脱げ」 「ああ」 今度は、ばさっと衣服を脱ぐ。下着一枚になったアーロンに鼻血が出そうになって、思わず目をそらした。 「いいか。おめーは水を怖がってるから沈むんだ。だから、まず慣れる」 「わかった」 そう言いながらも、しがみつく手は先ほどと同じ。だから、足付くっての。 「アーロン。裸でくっつくな」 やべーことになんだろ・・・。 「あ、済まない。気持ち悪いか?」 「逆」 「え?」 「ここ、掴まってろ」 自分の肩を掴ませてから、アーロンの濡れて張り付いた髪をそっと除ける。潮の味のする唇を甘く吸う。溺れる恐怖に身動きすらできないアーロンの弱みにつけ込んで。腰を抱いてやると、震えながらもじっとしている。 「・・・ジェクト・・・なんで・・・?」 「ぜってー、助けるから。それだけ考えてろ」 もう一度唇を塞ぐと、そのままゆっくりと水中に沈む。アーロンの全身が緊張で強ばる。 絶対、助けるから・・・。それだけを胸の中、アーロンは繰り返して。 頑なに閉じられた唇を、何度も根気よく舐める。力が抜けてきたところで、舌を絡ませる。 その時、アーロンの体がふわりと浮いた。 ジェクトが水中から引き上げたことすら気付いていないような、恍惚とした表情。 「アーロン!今浮いたろ?」 「ジェクト・・・」 「これで、もう泳げんぜ」 「ジェクト」 「ナニ?」 「今日は、もういいから・・・。ありがとう」 ああ・・・。まだしがみついてるから、わかっちまったか。欲しがってんの。 でも、俺もわかった。アーロンも同じだって。 「おう。続きは、明日な。ブラスカが迎えに来るまで別のことしよーぜ」 にやりと笑うと、そっぽを向く。 頼むから、ゆっくり来てくれ。ショーカンシ様。 傾きかけた太陽にキラキラ光る水面が眩しくて、照れくさくて、エボンの神に祈ってみたりした。 scince 16 May.2002 |
いつも遊びに来てくださるゆめさんから戴きました。 戴いた当時、ご自分のサイトお持ちではなく、 一人で楽しむのももったいないので 強制的アップしました(笑) つか、ジェクトさん、その勘違いどーよ? と、笑いながらツッコミ入ってしまいます。 でも、そんなジェクトが妙に可愛いし。 ゆめさん、ありがとう!! |
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