きれいな嘘

 

 風が薫る。


「・・・来ます、ね・・・」

 静かにブラスカは呟いた。

「・・・あぁ・・・」

 草原の真ん中に、胡坐を掻いて瞑想するように黙り込んでいたジェクトが、たった一言返す。

 その二人を、アーロンは、唯見守っていた。


 ザナルカンドの遺跡で、ブラスカはユウナレスカに『究極召喚』を授けられた。

 そしてジェクトは『究極の召喚獣』としての、役目を担った。

 そして、アーロンは、声も出せずに見守っていた。


 いつも、何も言えなかった。


「・・・アーロンは、私が・・好きですか・・?」

 以前、ブラスカに問われたことがあった。

 だが、

「・・・・はい・・尊敬して、おります・・・」

 そう、アーロンは返した。

 ブラスカの言わんとしていることが、判っていながら、わざとその返答をした。

 誰よりも、愛しい人だった。

 何度、この旅を思い直して貰いたいと願ったことか。

 それでも、その信念が決して曲がることがないと、曲げる人ではないと悟っているが故、愛しさは募った。


 ナイショバナシのような、恋


「・・・おめぇのこと、好きだから・・よ」

 以前、ジェクトに言われたことがあった。

 だが、

「・・お前は、大切な・・仲間だから・・・」

 そう、アーロンは返した。

 普段はふざけてばかりの彼が、心の底から打ち明けた言葉であることは、痛い程伝わってくる。

 それでも、還ってしまう人なのだ。

 彼の傍らは、心地良かった。何の気兼ねも緊張感もない、満たされた空間。

 それでも、いつか彼は自分の故郷に行ってしまう。


 友達でも 恋人でも ない二人


 風が揺れる。

「・・・・来ました・・・」

 ブラスカの眼差しが光る。

「・・・・おうよ・・」

 立ち上がると、ジェクトは腰の剣に手を掛けた。

 その二人を、アーロンは、唯見守っていた。


 そのアーロンの姿を、ほぼ同時にブラスカとジェクトは、見遣った。


 きれいな嘘をつく、愛しいひと

 背中を抱き締めても、強がるひと


 それでも、許そう


 だって、その気持ちは、顔に書いてあるから


 空が曇る。


 決戦が 始まる。






scince 11 jan.2002












どっちとも、なーんにもしてない
こんなのも、アリかな。

 

 

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