CRAZY A GO GO !!


「君に、優秀な人材を・・・引き抜いてきて貰いたい」
 そう、上司から命令されたのは半月前であった。

 ジェクトは、業界No.1と言っても過言ではない自分の営業手腕を自負していた。
 別に、今の会社に恩があるとも思わないし、コレと言って不自由もない。
 何より仕事が面白くて仕方がないのだ。
 どんな困難な職務を持ち込まれても、ハードルが高ければ余計に燃える性格で乗り切ってきた結果、
この若さでは前代未聞の地位にまで昇り詰めていた。
 そんな折に持ち込まれた、ヘッドハンティングの指令。
 ここ暫く刺激のない日々を送っていたジェクトが引き受けない筈がなかった。

 恐らく、管理職クラスには自分の面は割れているに違いない。
 そう判断し、わざと無精髭を伸ばし、普段は流して固める髪もボサボサのままにしてみた。

 配送業者として潜り込んだこの1ヶ月、商品管理の女の子とはもう仲良しと言えるであろう。
 日々、虎視眈々と狙っている獣のような気配をひた隠し、ただのガサツなオッサンとして振舞って
いる姿は、とても産業スパイなどには見えまい。
 そう自負しつつ、商品管理のユウナに探りを入れてみる。
「なぁ、ユウナちゃん、ココの上役さんらって仕事できんのかぁ?」
「ええ、最近赴任されてきたブラスカさんなんて、凄んですよーvv」
 ふふ、と軽く微笑みながらユウナは伝票の仕分けの手を止めない。
「・・・ほーぉ、そんなにスゲェヤツがいるのかぁ」
「赴任後、一気にいろいろなイベントを企画されて、かなり店も活気付いたみたい」
 こんなちっぽけな店に、思わぬ掘り出し物を見つけたかもしれないことで、ジェクトの詮索欲が疼
きだす。
「・・・あ、それに最近マネージャーも頑張ってるみたいだし」
「・・・?・・・マネージャー・・・?」
 自分の記憶を辿って行く。
 確か、あのマジメが服着て歩いてそうな、おカタイ雰囲気のヤツだろう。顔は、まぁ悪くない。
(どっちかといえば好みかもしれない)だが、ああいうタイプはどこまで行っても生真面目で、
損して生きていくタイプ故、出世とはかけ離れているだろう。
 だが、
「いつも夜遅くまで営業訓練してるって聞いたわ」
 その言葉が、更にジェクトの探究心に拍車を掛けた。
 一体、その切れ者がどんな訓練をしているというのだろう?
 もしかしたら、トンでもない優秀な人材に化けるかもしれない。
 探りを入れることが、胸中で決定した。

 自分は、ハンターであった。
 そう、あの『瞬間』に回り逢ってしまう迄は。

 荷物を届けるという名目で、上手く事務所に潜入し情報を物色しようと思っていた矢先の出来事。
 突き当たりの事務所の扉から、僅かに細い光が伸びる。
 明らかな人の気配に、ジェクトは心の奥で舌打ちした。
(・・・チッ、誰かいやがる、出直すか・・・)
 踵を返そうとした瞬間、

「・・・・・っ・・あ・・」

 艶めいた声。
(・・・・・・んだぁ?女でも連れ込んでるってかぁ・・・?)
 好奇心から、つい扉に近付く。
 その微かな空間から垣間見た光景。
 あまりの出来事に、心臓が鷲摑みされたような衝撃が走る。

 長椅子に座り、満足げに何かを眺める、『鋭利』な美しさを称えた男。
(あれが、確か支配人・・・ブラスカ・・とか言いやがったか・・・)
 そして、一糸纏わぬ姿で、その前に跪いて・・・・。
(おいおい、ありゃマネージャーじゃねーか?ナニさせてんだぁ、ナニを?!)
 数回、姿を見掛けただけであったが、予測した性格からは想像を絶するであろう彼の、あまりに
扇情的な痴態。
 恐らく、慣れていないのだろう、必死で支配人を悦ばせようとしている姿が何とも、そそる。
「・・・・そう、もっと舌を使って」
「・・・ぅ・・は・・い・・」
 言われるがままに、行為を進める姿は、どこか男の支配欲を掻き立てた。
 し・・んとした事務所に響く、卑猥な音。

(おっと、デバガメってる場合じゃねーや!!)
 あまりの光景に、ジェクトはそのまま見入ってしまいそうであったが、咄嗟に自分の目的を
思い出す。
 アタマをブンブンと振り、妄想を振り払った。
『ここで、こいつらに近付いて、ヘッドハンティングの対象か見極める』
 そう思うと、わざと音を立てて扉を開けた。

 それが、ハンターとしての役目を狂わせることになるとも知らずに・・・。

「おい、ジェクト!何ニヤニヤしてるんだ?!」
 支配人を待ちながら、隣に座るアーロンが怪訝な顔で問いかける。
「・・・なーに、大したこっちゃねぇ・・・」

 その時、もし躊躇していれば、今頃はもっと昇進していたに違いない。
「・・・・?・・変なヤツだ・・・」

 でも。
「・・・・おうよ、イカレちまってらぁ・・・」
 仕事より『面白いモノ』を、見つけてしまったのだから。

 キィ・・
 静かに扉が開く。

「お待たせしましたね」

 今夜も、堕落の女神とのダンスが、始まる・・・・。







2002.01.22UP





ability-empty様(現在FFコンテンツ閉鎖)に送ったものです。

若アーロンがマネージャー
ブラスカ様が支配人
ジェクトが仕入業者(実はヘッドハンター)
他にも、モア氏が取引先の社長だったり
T太がアルバイトくんだったり
ユウナが仕入れ管理のおねーちゃんだったり
ルーが下着売り場のおねーさんだったり
以下略(笑)しまして、 
支配人が営業訓練と言ってはマネージャーに
あーーーーんなことやこーーーーんなこと(笑)
してしまうのを、ジェクトが見てしまって・・・
という、参加型デパート物語SS企画があったです。
そのサイドストーリー(笑)

あの企画は、マジ楽しかった・・・
ログ、取っとけばよかった。




今だから言いますが、コレが
桃色クラブのヒントになったりして(爆)








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