top secret


 秘密は守られる
 それは
 Top secret


 ユウナレスカとのバトル後、飛空挺に乗り込んだユウナ達一行は、シンとの最終決戦を残す
のみとなっていた。だが、シンと一戦を交える前に、自分達のバトルレベルをもう少し伸ばし
たいという意見がティーダから出た為、飛空挺の行く先を変えることとなった。
「で、どこ行くんだ、ボウズ?」
「う〜ん・・・」
 進路をシドに問われ、暫くティーダは考え込む。
「・・・そういえば、雷平原に調べてない石碑があった気がするッス・・・」
「あったねー、ヘンな石!」
 リュックが横から口を挟む。
「そんじゃあ、行っとくか!」
 シドの言葉に、アニキは飛空挺の船首を巡らせた。

 雷平原の旅行公司で降り立つと、ティーダはアーロンに向かって語り掛ける。
「あのさ、ちょっと聞きたいことあるんだ・・・」
「・・・何だ?」
 濃い色のサングラスに隠されたアーロンの隻眼からは、表情は読み取れない。
「・・ええと、時間もらっていいッスか?」
 ここじゃちょっとね、と付け足してティーダはユウナ達の元へ駆け寄り、二人で話をしたい
旨を説明すると、二人は一行から離れて行った。
 避雷針の掲げられた建物までやってくると、アーロンが
「・・で、何を聞きたかった?」
 静かに訊ねた。
「・・・うん、あの・・ユウナレスカのバトルの後に、アンタが言った・・・」
「・・俺が死人だということか?」
 あっさりとアーロンから返答が返る。ティーダは何だか物悲しい感覚に捕らわれた。
「それじゃなくて、それもあるけど・・・その、オヤジのこと・・・」
「・・・ジェクトの?」

 確かめたかった。
 あの時の・・・。

「・・・オレ、あの・・・」
 そう言い掛けた途端、
 ピシャーン
 物凄い稲光と共に、凄まじい落雷音が響き渡る。衝撃からいって、間違いなく近くに落ちた
だろう。
「・・・出るぞ」
 言い終わらないうちに、アーロンの足は建物の入り口へと向かった。
「・・あ、ああ!」
 ティーダも即答で後に続く。
 扉を開けると、目の前の鉄塔が、激しい雷に耐え切れなかったのか、黒く焼け焦げグラつい
ているのが目に入る。
 そのシルエットが揺らぐ。
「・・いかん・・!!」
「・・う、うわ・・!・・」
 真っ直ぐこちらに向かって倒れて来る。
 咄嗟にアーロンはティーダを突き飛ばし、室内に押し戻した。
 激しい音と共に、建物は半壊して行く。

 気が付くと、出入り口が完全に塞がれていた。
 そして、
「・・・アーロン!!」
 砂煙の中に横たわるアーロンの姿を見つけると、ティーダは猛ダッシュで傍に駆け寄った。
「アーロン!!しっかりしてくれよ、アーロン!」
 服は煤に塗れ、サングラスは何処かに飛ばされてしまっていたが、大きな外傷は見当たらない。
 肩を揺すると、僅かに眉根が動く。
「・・・生きてる・・・よかったッス・・・」
 取り合えず、無事を確認すると、砂煙の収まった室内を見渡した。
 鉄塔が完全に室内の半
分を打ち壊している。こちらからの出口は塞がれ、内側から崩すと建物自身が崩壊しかねない状
態である。
「・・・キマリ達、気付いてくれるかな・・・?」
 今はそれを待つしかなかった。
「・・・う・・・」
 アーロンの身体が微かに動く。
「大丈夫ッスか?・・・」
「・・・ここ・・は・・・・」
 アーロンは、ゆっくりと、頭を抑えながら起き上がった。
「・・・どこ、だ・・?」
「さっきの建物ッス。避雷針が倒れて入り口潰しちゃったけど・・・」
 答えるティーダを、訝しげな瞳で見詰める。
「あ、どっか痛い?ポーション使おっか・・」
「・・・誰・・だ・・・?」
 ティーダは固まった。
「な、なに言ってんだよ、アーロン?」
 アーロンの片瞳は猜疑心に満ちている。彼に自分を騙すなんて芸当が出来ないのは、ティーダ
自身が一番よく知っているつもりだった。
「・・・なぁ、オレのこと、分かんないの・・・?」
「・・お前・・何故、俺を知っている・・・?」
 再びアーロンの口から問われる。
「・・・マジッスか・・・」
 恐る々々、もう一度語りかけてみる。彼のココロを壊さないように・・・。
「・・オレ、ティーダだよ」
「・・・・ティーダ・・・ジェクトの・・息子の・・・?」
 疑惑に満ちながらも、その言葉から何もかも忘れている訳ではなさそうなことが判る。
「そうッス!なんだ、覚えてんじゃん!!」
「・・馬鹿な・・・ジェクトの息子は、まだ7歳だと言っていたぞ・・・!」
 なにもかも、ではないのは喜ぶべきであった。
 だが、ここ10年位の記憶が抜けているらしいことを察し、ティーダは再び肩を落とす。
 ティーダは方法を変えようと思った。
「・・・アーロン、『今』『何を』してるッスか?」
いきなり『現実』を押し付けるのではなく、アーロンの『今』が『過去』であることを悟って
もらうしかない。
「・・・今・・・?・・俺は召喚士ブラスカ様と、究極召喚を得る旅をして・・・」
 アーロンは疑問を持ちながらも、自分を見詰めている、どこか見覚えのある蒼い瞳に返答する。
「ふたりで?」
「・・・いや、ジェクトも・・・一緒に・・・」
「どこまで、旅した?」
 アーロンは軽く額を押さえる。どこか靄が掛かったような、曖昧な記憶を必死で辿る。
「・・・ザナルカンド・・・、ユウナレスカ様に、お会いして・・・」
「会ったんだ、じゃあ・・・シンは?」
 ティーダはこの先の答えを予想し、言葉尻を優しく囁く。
「・・・シンは、究極・・召喚・・・で・・・・」
 アーロンの額を、急に脂汗が伝う。
 すぐ其処に、恐ろしい魔物でも潜んでいるかのように、唇が乾き、震えた。
「・・あ・・・俺・・は・・・」

 究極召喚
 ジェクトの変化
 崩れるブラスカ
 そして
 
 目の前のユウナレスカ
 弾き飛ばされる、自分

「・・・ぁあ・・!!」
「アーロン・・!」
 頭を抱えて崩れ行くアーロンを、ティーダは支えるように抱き寄せた。
「・・何故・・っ・・ブラスカ様・・・ジェクト・・・っ!!」
 悲鳴のような声と共に、アーロンの全身がガタガタと震える。
「・・アーロン・・!!」
 ティーダはその張り詰めた躯を、強く強く抱き締める。
 何処へも行かせないように。繋ぎとめるように。

 訊きたかった
 継続出来ない嘘に 気付いたとしても
 きっと 変わらない『言葉』

 そっと、アーロンの顎を引き寄せ、優しく唇を重ねる。
 アーロンは無抵抗だった。
 軽く唇を啄ばむと、ビクと鳶色の方瞳が揺れる。
 僅かに離した唇の隙間から、アーロンの溜息にも似た声が漏れる。
「・・・・・ト・・・?」
 その、微かに聞き取った言葉に、ティーダは思わず顔を顰める。
「・・・言う・・なよ・・・・」
 気付いてしまった。
「・・ちゃんと・・『オレ』に話せよ・・・!」
 疑問でしかなかった自分の感情が、本物であることに。
「・・んで・・何で・・」
 それも、たった今。
「・・・何故、泣く・・・?」
 アーロンの言葉に、自分が涙を流しているのが判った。
「・・アンタの・・・せいだよ・・っ・・・」
 ティーダは手の甲で涙を拭うと、悪ガキっぽく歯を見せる。精一杯の強がりだった。
 その表情に、アーロンは目を細める。
「・・・・本当に、ジェクトの・・息子だ・・な・・・」
 カラ・・ッ・・・
 背後の瓦礫が、僅かに崩れる。
 二人は一斉に振り返って、その音の源を見詰めた。
「おーい!!」
 聞き慣れた声が、微かな空気の流れに乗って耳に届く。
「・・・ワッカ?!」
「あぁ!いたぞぉー、ルー!ユウナ!!」

 段々、瓦礫が取り除かれ、外の光が差し込む。
 薄暗い、だが、先程よりは確実に明るい外気が流れ込むと、アーロンは軽い眩暈を覚える。
「・・アーロン!?」
「アーロンさん!!」
 そのシルエットがぐらりと揺れた。

 薄灰の天井が、ぼんやりと目に入る。
 頭の芯が霞罹っているような、スッキリとしない感覚。
「・・・目ェ覚めたッスか?」
 自分が横たわるベッドの横に座り、静かに問いかける蒼い瞳があった。
「・・ティーダ・・」
 アーロンが迷わずその名を口にしたのを聞くと、ティーダは思わず安堵の笑みを漏らした。
「どっか痛い・・?」
「・・・いや・・・・」
 深呼吸するように息を漏らすと、アーロンは再び天井を仰ぎ見た。
「・・・で、結局、何の用だったんだ?」
 返事がない。
 無言のティーダにアーロンの目線が移る。
「・・・ん・・・、もう判ったから・・・」
 とても穏やかに、だが寂しそうに、ティーダは微笑んだ。
「とにかく、今は休んだ方がいいッスよ」
 その表情に、アーロンは逆に苦笑する。
「・・・本当に、お前は・・・・」
 言いかけて、言葉が止まった。
「アーロン?」
「・・・すまん、少し眠りたい・・・」
 優しく頷くと、ティーダは席を立ち、扉の向こうに姿を消した。

 閉じた扉に背凭れると、ティーダがポツリと呟く。
「気付いても、変えないのが・・・秘密ってヤツだよな・・・」

 アーロンは、自分の唇にそっと手を遣る。
「・・・『変えられない』から、な・・・」

 隠していたことが 自分をさらっても
 変わらない言葉
 それは 秘密

 それは Top Secret








2001.11.26UP



Secret Heaven様に
またも強引に送りつけたモノ。
初のティアロ作品です。
このまま勢いついてティアロに
突っ走った・・・(苦笑)

結果、裏行き(爆)





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