CAT napping




 薄暗い階段を一歩ずつ下って行く。
 入口に小さな外灯が置かれただけの空間は、どんどん闇の色が深くなってゆく一方であった。だ
が、まるで見えているように、幸鷹は危なげな様子もなくその闇に身を投じた。
 黴臭い匂いと、ぐっと増す湿度。外が雨だからだろうか、ひんやりとした空気が肌を刺す。
 狭い通路の突き当たりに、仰々しい錠前が三個並べられた鉄の扉があった。扉の上の蛍光灯が
切れ掛かっているのか、時々点滅を繰返した。
 ポケットからじゃら、と出した物々しい鍵で、ひとつ、またひとつ、封を開いて行く。外した錠は床へ
ひとつ、またひとつ並べるように置いた。

 ギィ、という鈍い音と共にその重苦しい扉を押し開けると、微かに明るい空気が洩れた。
 部屋の中には小さな裸電球が吊るされ、幾分か通路よりも明るさを増している。
 中に入り、もう一度重い扉を戻すと、中側に付いた錠をガシャリと掛け、開かないかをノブを回して
確認した。
「・・・・・・・・・・相変わらず厳重だね、幸鷹」
 その声に、振り返る。六畳程度の然程広くない部屋は、じめじめした空気を漂わせた。
「そんなことをしなくても、逃げたりしないのだけどね」
 男は広めのパイプベッドに横たわりながら、ゆるやかに口の端を上げた。
「・・・・お前の指示は受けない」
 幸鷹の言葉に、一瞬無表情になるが、ふ、と笑みを漏らした。

「・・・あぁ、そうだった」
 そう言って笑いながら男は仰向けに転がった。その動きに合わせて、しゃら、という金属音が鳴
る。

「私は、君に飼われているんだったね」

 首に付けられた皮のベルトを軽く引っ張り、左の足首にしっかりと嵌められた枷を見ながら、楽し
そうに呟いた。
 足枷には頑丈な鎖が付けられ、それはそのまま床にしっかりと打ち込まれている。その長さから
言っても、扉まで近付くことは出来ないだろう。
「・・・・・・・・・・で、今日はどうしたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 無言の幸鷹に、くすくすと微笑む。
「・・・・・・あぁ、『する』ために来たんだ」
「翡翠!」
 男の言葉を遮るように、幸鷹は名を呼んで制した。
「違うの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 真正面から問われ、幸鷹は目を逸らした。
「君がここに来るのは、それ以外にはありえなかった」
「違う・・・・それはお前が無理矢理・・・・」

「だったら・・・・・・・何故、また来るの、ここに?」

 耳を塞ぎたい衝動に駆られる。

「何故、私を・・・飼うの?」

 だが、拒めない。

「・・・・・・・・・おいで」
 翡翠は再び横たわりながら、幸鷹に手を伸ばした。
「・・・・・・・・・・・・」
「おいで、幸鷹」
 ふら、と引き摺られるように幸鷹の足が動く。
 パイプベッドの手前まで近付いた瞬間、
「・・・・・・・・・っ・・・・」
強引に手を引かれ、固いスプリングの上にうつ伏せに投げ出される。
「何を・・・ッ」
 反論の言葉を投げかけようと身体を仰向けにしようとすると、
「・・・・・・・・何・・・・?何をするのか?」
目の前にはくすくすと微笑む翡翠の顔があった。
「・・・・・・・・・・・・」
真っ直ぐに見ることが出来ず、幸鷹は再び翡翠から目を逸らす。
「決まってるよね・・・・・・・・・君は私と、セックスしに来たんだから」
「・・・・・・違う、それは・・」
 翡翠に強引に顎を取られ、上を向かされる。その先の言葉は、出なかった。

「・・・・・いい子だね?」

 満足気に微笑んだ翡翠は、静かに唇を重ねた。






2004.10.21

こういうネタでした(10月19日の日記参照:笑)

タイトルは『誘拐』のkid napの造語です。
裏かどーか悩みましたが、
まぁこの程度なら表でもいっか。と。

裏ver.…作ろっかな(また冒険を…)

ウインドゥを閉じてください

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