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■ 鈍 T ■



 気持ちの良い朝だとジェイドは思った。日差しも然程強くなく、空気も心地よい。港から少し離れた場所にある星の総督の館では、天の都のように潮の香りはあまり強く感じなかった。
 こんな風景を見たのは、初めてではない。だが、ジェイドの思考からそんな事はあっさりと消えた。
「・・・・・・さて・・・」
 朝と言っても、決して早い時間ではない。あの鷹通がこんなに寝坊するとは考えにくい。ましてや、こんな日に姿を見せない事がおかしかった。
 ジェイドは総ての荷物を船に載せると、そのまま鷹通の部屋へ足を運び、扉をノックする。何度か戸を叩くが、返事は一向になかった。ノブを回すと、あっさりと扉が開く。
 中を見回すと、カーテンがきっちと引かれ室内は薄暗かった。寝台はきちんと整えられている、というよりも、ベッドメイクされたまま全く使われた形跡がない。いくら鷹通がしっかりしていても、ベッドメイクまで自分でやってしまう事はありえない。(何しろ、そうすることで召使達の仕事を奪ってしまう事を知っているのだから。)
「あ、ジェイドさん!おはようございます」
 詩紋が驚きながら開け放たれた扉から室内へと入って来る。
「おはよう、詩紋、どうしたの?」
「はい、ちょっと幸鷹さんの衣装を取りに伺いました」
 元気に微笑みながら、詩紋は引かれたカーテンをさっと開く。室内に差し込む光が、薄暗闇に慣れた瞳には思いのほか眩しく感じたのか、ジェイドは小さく眼を細めた。
「では幸鷹殿は・・・総督のお部屋?」
「はい!・・・・・・・あっ・・あの・・・・」
 誘導尋問にあっさりと引っ掛かってしまった詩紋は、困った顔をしながら口ごもってしまう。
「構わないよ、側近の私が知らない筈ないだろう?」
「・・・そ、そうですよ・・ね・・・・・・・」
 とは言え、自分のミスを気にしているようで詩紋は無言になってクロゼットの扉を開いた。
「じゃあ、私は行くから」
「えっ?!」
 ジェイドがあまりに普通に振舞っているので、詩紋もそう言われるまで、彼が今日旅立つ事をすっかり忘れてしまっていた。
「もうですか?!じゃあ幸鷹さんに・・・」
「あぁ、構わないから」
「でも・・・・」
「本当にいいから、代わりに幸鷹殿に伝えてくれまいか?」
「・・・・・・・・・・・いいんですか?」
 いつもと変わらない微笑みで頷くジェイドから、詩紋は短い伝言を受け取った。







20050216



金色の天と白銀の星

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