「・・・・また君か」
「ご挨拶ですね」
 海賊の深い溜息にも、国守は全く意に介す風はなかった。
「ねぇ国守殿、おかしいとは思わないのかい?」
「何がでしょうか」
「官人が、海賊の、しかも首領の元へ、こう足しげく通うということが」
「私が余程熱心に、貴方に海賊を辞めるよう説得していると、民は感心しているようですよ?」
「・・・・・・・・・そう」
 再び、海賊は深く溜息を吐いた。
 新しい国守は、面白い人間だった。今までの輩とは、根本が大きく違う。正義は正義で、悪は悪。
しかし、何者にも公正で、悔い改める者には暖かく手を差し伸べた。
 甘い。そう言われればそれまでなのだが、今までそう思って、多くの国守達は海賊の一掃にこの
作戦を用いなかった。その思い切りの良さに、翡翠は関心を寄せた。
 しかし。
「幸鷹殿」
「なんでしょうか」
「もう一度、各々の立場を考えててみようじゃないか?」
「はぁ」
「君は、伊予守ではないのかい?」
「はい、そうですが」
「私は?」
「海賊ですね」
「しかも、頭領なのだが」
 頭領。まるで初めて聞くようにその言葉を反芻するが、
「で、それが、どうしたのいうのですか」
すうっとその喉元から流れ落ちるかの如く、あっさりと返される。
「だからね」
 翡翠としては、もう溜息は吐きたくなかった。
「はい」
 素直に頷く姿は、妙に可愛らしいものなのだが。
「何故、私なのかな?」
「何故でしょうか」
「・・・・・わからないの?」
「えぇ、自分でも不思議でなりません」
 海賊で、不真面目で、遊び人で、と幸鷹は指折り数え、
「酷い言われようだね」
「ですが」
自由で、風流で、博愛ですね、と折った指を順に立て直して行く。
「・・・・・・・・・・・・」

「そういうところです」

 にっこりと、並みの少女よりも数倍綺麗な微笑みを浮かべた。

「そういうところが、好きです」

 まるで、甘い蜜を溶かしたような、言葉。

「恐ろしいね、君は」
「なにがでしょうか」

 そして、甘い蜜を垂らしたような、微笑み。

「せいぜい」

 絡め捕られないように気を付けることとしよう、そう、翡翠は微笑み返した。






2005.5.22 

お頭。二十四日お誕生日おめでとう。

幸鷹が別当でいる限り、この展開は
ありえないと思っているのですが、
お頭が好きで好きで仕方ない、という
幸って、なんだか萌え(笑)

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