眠る森[20] |
「・・・・・・・死んだの」 「は」 案内人の若者は、淡々と言葉を継ぐ。 「死体は如何いたしましょう」 「・・・・海にでも捨てれば良いのでは?」 「かしこまりました」 案内人は、一礼して部屋から姿を消した。 「・・・・・馬鹿な男だったねぇ」 ねぇ、そう思わないかい? 「まぁ、死体と同じ顔なんて、気持ちの良いものでもないけれど」 君も、そう思っただろう? そう言いながら、鏡合わせの男は、腕の中の少年を愛おしそうに抱きしめる。亜麻色の髪を指でさらさらと梳いた。 嵐の過ぎ去った海は穏やかで、波も静かに満ち干きを繰返していた。海面に陽を浴びて、きらきらと輝く様を、男は見るともなしに見遣り、再び腕の中の少年の髪を梳く。 未だ眠ったまま、開かれない瞳に、唇を落とした。 ■ END ■
2005.07.21
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