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謎よ、もっと深まれ

何時からだろう、そんな事を考えるようになったのは。



周囲には、いつも彼を監視する者が居た。
その輩から学んだのは、語学、経済学、哲学等。
所謂『帝王学』であった。

又、周囲にはいつも彼を包囲する者が居た。
その輩から学んだのは、格闘術、武術等。
所謂『護身術』であった。

そして『母』は、祖父に命じられる儘に、その身に様々な事を教え込む。
最低限の生活水準を保つ家事全般、一般教養等。
所謂『処世術』であった。

しかし、『母』はそれ以外の命を祖父から受けていた。
『性教育』であった。

そう言えば聞こえは良いかもしれない。

要は、ひとを『誑し込む』術を教育されているのだ。
こう言えば、ひとは好感を覚える。
そして、簡単に心と躯を許す。

皮肉にも見目美しい姿は、女でも男でも、簡単に揺るがす事が出来よう。

相手が女なら、こうすれば悦ぶ。
相手が男なら、ここが感じる。

ひとの心を掴む術をも、まるで方程式の様に。


幼い頃は、それがごく当たり前のことであって、何ら疑問には思わなかったものだ。
ひとと接して、皆、自分に翻弄されて行く。
最初は、楽しくて楽しくて仕方が無かった。
こうやって、ひとを動かす事が彼の『祖父』にとっての帝王学であったに違いない。

しかし、ある日、
彼はそれに虚しさを感じた。

何もかも、自分の思うが侭。
なんと味気ない人生なのか。

若干10歳の少年は、如何に帝王として君臨出来ようとも、人生を楽しむ術を知らない。




何時しか、思うようになる。

もっともっと、自分に困難が降り掛かれば良い。



謎よ、深まれ。












2003.4.6


初書きリュウ。
何も言えない・・・・
要:精進努力。








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