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■ 金 T ■ 潮の香りで目が覚める。 起き上がろうとするが、手足が何故か痺れて、思うように身体が 動かなかった。 瞳だけを巡らせながら周囲を見回す。自分がいるのはどうやら大 きな寝台らしい。全体的に白い部屋・・・白いというよりは、家具 がほとんど無いため壁だけが目立ってそう見えるのかもしれない。 開け放たれた窓から流れ込む空気に混じって海の匂いがした。風に 靡く白いカーテンは、素人目にも上質なものであると感じた。 「・・・・お目覚めかな?」 不意に聞こえてきた声の方向に首だけを何とか動かす。その先に は、真っ直ぐに伸びた長い髪を指先で弄びながら、こちらを眺めて いる男がいた。綺麗な造作の口元に、楽しそうな笑みを浮かべて。 「・・・・・・・・ぁ・・・・・・」 貴方は そう問おうとしたのに、唇が思うように動かない。 「・・・少し薬が強かったようだね、これはすまなかった」 少しもすまなそうに聴こえない口ぶりの謝罪であった。 薬。 そう言われて、漸くこれまでのことを思い出す。 鷹通は、身震いした。 20050121 |
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