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■ 金 [ ■ 朝一番に、ジェイドは三冊の分厚い本と書類の束を抱えて鷹通の 部屋を訪れた。 「後二日で、君には完全に幸鷹になりきってもらわねけばいけない」 ジェイドの言葉を、鷹通は答えず黙って聞いている。 「貴族としての最低限の教養・・・それから振る舞い・・・この本 を読めば、大まかな内容は把握できる」 ぱらぱらと捲って見せられる頁は、余すことなくびっしりと文字 が書き連ねられていた。 「あとは親戚関係・・・顔は先に見せることが出来ないからね、 名前と関係だけ頭に叩き込んでおいてくれたまえ」 書類の束に恐らくそれが書かれているのであろう。 「それから・・・『幸鷹としての振る舞い』・・・これが一番肝心だ」 ジェイドは間合いを一気に詰めると、徐に鷹通の顎に手を掛け顔 を持ち上げた。 「・・・・・・・・・っ・・・・・・」 突然の事に、鷹通は驚きその場に固まってしまった。 「ここで幸鷹ならば即、手を払うだろうね・・・そして、一言罵声 も飛ぶ」 「・・・そ、そんなことを急に言われても・・・」 「だが、やってもらわないといけないのでね」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 そう言われ、鷹通はジェイドの手を然程強くない力で払いのけた。 「そうそう、その調子で」 ジェイドの含み笑いに不快な気分を感じながら、鷹通の永い二日 が始まった。 20050123 |
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