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■ 銀 V ■



 友雅達が天の館に入ってから二日が過ぎた。代わる代わる、藤原
の親戚だという人間が挨拶に来ては詰まらない話をして去って行く。
幸鷹の側近に、友雅によく似た人物がいるだとか、幸鷹自身の賛美
(身内の贔屓目でない事を願っているが)であるとか、色々な話で
ある。だが、当の本人と見えることはまだ一度もなかった。何で
も、ここ半年の間の病が、ようやく最近全快したばかりで未だ不安
定なのだということであった。
 便宜上の相手はアクラムに任せ、友雅は女官や婦人方と談笑に耽
る毎日で、また泰明を呆れさせていた。
「いつまで此処にいなければいけない」
 一向に告げられない詳細に、泰明は表立っては平静だが、行き当
たりばったりは嫌いだといつも言っているだけあって内心不快であっ
た。
「元々このご招待は四日間・・・そろそろでないと、あちらもまず
 かろうね」
 友雅の言葉尻と同時に、
「失礼致します」
執事風体の男に、扉の開け放たれた部屋の入口で一礼しながら声を
掛けられる。執事は部屋に一歩踏み入れると、懐から恙無く封書を
差し出した。
「明日の夜、当主が宴を催したいと申しております・・・ぜひ、ご
 出席を」
「ぜひも何も、我々は総督にお目通りを願いに来たのだ」
 つかつかと歩み寄りながら、泰明が腰の引けた執事からそれを受
け取る。
「・・・申し訳ございません」
「泰明殿」
 歯に衣着せぬ物言いを制しながら、友雅は泰明からその白い封書
を手渡された。
「驚かせてすまないね、ぜひとも出席させていただくよ」
「は、ありがとうございます」
 必死で平静を装いながら、一礼し部屋を去る執事を気の毒に思い、
友雅は苦笑いした。それを泰明は内心不快な、表向きはいつもと変
わらぬ顔で眺めていた。







20050123



金色の天と白銀の星

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