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■ 銀 W ■



 宴の間は、友雅が思った以上に質素なものであった。天の都の総
督の全快祝いも兼ねているのだから、豪奢に行うかと思ったのだが、
出席者をよく見ていると、実際にここを訪れているのは親戚と、一
部の親しい貴族のみのようである。
 早々にワインを飲み干す友雅を見て、泰明は一瞬眉を顰めた。
「こんな時くらい、素面でいようとは思わないのか」
「こんな時だから、飲まないとやっていられまい?」
 通りすがりの召使にもう一杯所望しながら、友雅はいつもと変わ
らぬ態度で泰明に皮肉めいた笑いを向けた。
 こんな茶番劇。胸中で友雅は呟く。都人から見れば、こんなもの
は茶番でしかないであろう。別に互いが『もう争いません』と言え
ば済むだけの問題を、ご丁寧に余計な形を付けたがる。
 噂では、天の都の総督はかなりの美形と聞くから、友雅にしてみ
れば構わないのだが、意に染まない養子縁組は本人に取っては大迷
惑な話だろう。本人がそれを当たり前としている、貴族の垢にどっ
ぷり使っている人間でなければ、の話だが。
「おぉ!幸鷹、心配したよ!!」
「お元気そうじゃないの、よかったわ!!」
 扉の付近から一斉に声が上がった。
「・・・どうやら、ご登場のようだな」
「だね?」
 泰明の声も何処吹く風の如く、友雅は新しいワインを口にした。







20050126



金色の天と白銀の星

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