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■ 金 11 ■ 優しげな顔をした若者が、鷹通の傍に近付く。囲んでいた親戚と 思しき連中が場を空けるのだから、きっと高貴な身分に違いないと、 鷹通は思った。 「もう大丈夫なのですか、幸鷹殿?」 「・・・はい、ご心配をおかけしました」 とにかく返事をしなければ、と鷹通は当たり障りのない言葉を返す。 「これは彰紋殿、わざわざ壌の都からお越し頂きまして、恐縮です」 背後から聞こえるジェイドの言葉に、鷹通は必死で記憶した資料 のページを脳内で捲った。『彰紋』『壌の都』、彼は壌の都の総督 だと辿り着いた。確か、幸鷹が学生の頃に壌の都に留学しており、 その頃の学友だと。 「彰紋殿もお変わりなく、何よりです」 鷹通の言葉に、ふふと彰紋は微笑んだ。 「そうですね、貴方も学生の頃と変わりない・・・むしろ、少し学 生の頃に戻ったように思えますよ」 彰紋の指摘が鷹通にぐさりと刺さる。実際に、幸鷹よりも自分の 方が年下であった。恐らく第三者が見た処はほとんど歳の差を感じ ないが、今の鷹通は逆にそれを意識してしまうのだった。 「・・・そ、そうでしょうか・・・・」 「病み上がりは、人が変わったようになると申しますからね」 ジェイドのフォローに、そうですね、と彰紋が微笑む。それを見て、 鷹通は内心ほっとした。 そこからは、誰と話したのか後から思い出そうとしても、鷹通は さっぱり覚えていなかった。そのくらい数多くの人間と挨拶を交わし、 同時に記憶を必死で引き出した。その作業のおかげで他の記憶はすっ かり頭から飛んでしまったのだ。 ただ今思えば、その後のインパクトが大きくて、記憶が飛んでし まったのだが。 20050127 |
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