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■ 金 13 ■ 翌日、友雅が朝一番で星の都へ戻ったとジェイドから聞き知った。渡された封書には彼の自筆で、いつでも幸鷹の訪問を歓迎する旨が書かれてあった。 「あんなことがあっても、意外にめげないタイプらしいね」 封書の中身を確認しながら、ジェイドは嘲笑気味に笑いを浮かべる。 「つまりは、あんな恥をかかされても幸鷹殿の養子縁組を断るつも りはない、ということだ」 その笑みを見て、鷹通は以前感じた疑問が再び湧き上がる。やはり、ジェイドはどこか星の総督を軽蔑しているような感があった。 「君と約束があったね」 「・・・・・・・・・・・!」 そう言われ、鷹通はそれまでの考えを一気に胸の内から飛ばしてしまった。頼久に会わせてもらうことを条件に、昨夜の宴に幸鷹として出席したのだから。 「五日程待ちなさい、連れて行ってあげよう」 「・・・五日も・・・・」 「彼の容態もあるからね、我慢したまえ」 仕方なく、鷹通はその言葉に従う事にした。 五日の間、ジェイドと様々な会話をした。彼の話題は面白く、その世界観の広さに驚いた。幼い頃は様々な土地を旅をして回ったのだと彼は言う。それ以上は話さない様子から、あまり触れて欲しくないのかと思い、そうですかと聞き流した。そう思えば、五日間などあっという間であった。 離れ家を裏口から抜け出すと、ジェイドは裏口の脇にある厩から栗毛の馬を率いて来た。 場所は内緒だからね、と馬に乗せた鷹通に目隠しをすると、自分も同じ馬に跨る。ゆらゆらと馬の背に揺られながら20分程は経過しただろうか。 「着いたよ」 ジェイドの一言と同時に、目隠しを外される。目の前にあるのは、小奇麗とは言い難い古いアパートで、周囲もまるで廃墟のように殺伐としていた。 「・・・・ここに?」 「仕方あるまい、真実は如何様にしても・・・お尋ね者だからね」 「・・・・・っ・・・・」 未だに自分達にはブローチを隠匿した罪が着せられているのかと思うと、居た堪れなくなる。そんな鷹通の思いを知ってか知らずか、ジェイドはアパートの中へ進んで行き、鷹通もその後をついて建物に足を踏み入れた。 殆ど手入れのされていない埃に塗れた廊下や階段を抜け、一つの部屋に辿り着く。蜘蛛の巣などが張った他の部屋とは違い、その扉だけは微かに清掃の跡があった。 「ここだよ」 ジェイドに促されると、鷹通は息を止め、扉を開いた。ギィ、という古めかしい音と共に開いた戸を潜ると、真正面に部屋の造りとは明らかに異なる、物々しい医療器具と、真新しい寝台が置かれている。その上に横たわっているのは。 「・・・・より、ひさ・・・」 そっと近付き声を掛けてみるが、反応は無かった。 「意識が、まだ戻っていないんだよ」 「・・・・・・・・・そんな・・・」 青白い顔の頼久は、目を閉じたままぴくりともしない。微かに動く唇が呼吸を刻んでいるのは判るが、それ以外は微動だにしなかった。 「脇腹を銃弾が貫通している・・・肺を掠めているようだから、 状況は芳しくないね」 「・・・助かる・・の・・でしょう?」 「・・・・・・五分五分だね」 淡々と語るジェイドが酷く冷酷に見え、背筋が凍る。 「前にも言ったが、彼にはきちんとした治療が必要で・・・藤原の力 があればそれが出来る」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 鷹通はそれに答えず、と言うよりはそれにどう答えて良いのか判断がつかないまま、暫し無言で頼久を見守った。 一時間は経っただろうか、ジェイドに促され一度館へ戻る事にし、再び目隠しをされたまま馬上に揺られ藤原の離れ家まで戻ったのは陽が落ちるより少し前であった。 20050130 |
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