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■ 銀 Y ■



「ところで、アクラム」
「なんでしょうか?」
「あのブローチの行方は見つかったの?」
「・・・・・・珍しいですね」
「私もそう思うよ」
 友雅がそういった事を気にかけるのは稀である。
 天の都から戻って、五日。相変わらずの公務に追われながら、友雅はのらりくらりと日々を過ごしていた。
 何かに固執しない友雅は、人にしても、物にしても、いつも適当にあしらって来た。刺激のない日々に珍しいものが飛び込んでくると、その瞬間は囚われる。だが三日も持てばその好奇心も冷めるのは毎度のことで、自分でも然程気になどならなかった。
 しかし、時折何かの弾みであの天の総督のことを思い出す。木箱を突き返した、あの眼差しを。それがきっかけで、考えはあのブローチの盗難にまで遡って行ったのだ。
「で、行方はどうなっているの?」
「盗んだ金細工師が行方をくらませているようで、未だ見付かって
 おりません」
「・・・ふぅん、そもそもの経緯を聞かせてくれないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・御意」
 ブローチを街の金細工師へ預けた事。使者が引き取った翌日に鑑定士に確認させた処、偽物であると判定された事。それを金細工師に確認に行った先で、店主は逃げ、もう一人は抵抗の為に使者が脇腹に向けて発砲した事。
 アクラムが掻い摘んで語る内容を、友雅は一つずつ整理して行く。
「・・・発砲したという事は、殺したの?」
「いえ・・・発砲の後、逃げた店主を追っている隙に姿を消したのです」
「銃で撃たれてたのに、動けたのかい?」
「動けてもそう遠くへは行けないでしょう・・・若しくは仲間がいたか・・・」
「で、二人とも見つからない・・・と」
「・・・・・は」
 状況は、確かに金細工師達に不利なものばかりだ。だが、そこまでのリスクを冒してまであのブローチを盗むだろうかと友雅は思った。売るにしても、あれでは目立ちすぎてルートが簡単に割れてしまうのではないのか。
「ブローチが闇ルートで捌かれた跡は?」
「ございません」
「・・・・・そう・・・・」
「細工師ですから、加工して足がつかないようにしているのでは?」
 そういう手もあるか。
「どちらにしろ、逃げた店主からもきちんと話を聞かなくてはね」
「話?逃げた犯人からですか?」
「追い詰められれば、やっていなくても逃げたくなるだろう?」
「しかし・・・・」
「材料が少なすぎるよ、アクラム・・・?」
「・・・・・・・・・・・御意」
 アクラムは答えると、部屋を後にした。いつもの友雅は、こういったことは周囲に任せ切りで自ら口を出すことは少ない。今回はどういう風の吹き回しなのかとアクラムは思いながら、このまま厄介な事にならないように手を打たねば、と画策していた。







20050130



金色の天と白銀の星

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