金色の天と白銀の星



■ 金 15 ■



 もうすぐ夜が明ける。
 ジェイドが幸鷹を何処に運び込んだのかは不明だったが、今の鷹通は言われた通り自室で待つしか出来なかった。窓際の椅子に座ったり、立ち上がって歩き回ったり、落ち着くことなもないまま、窓の外が白み始め、眩しい光が差し込んだ時であった。
 ガチャリと部屋の入口が開く。
「・・・・ジェイドさん・・・!」
 そのいでたちは夕べのままで、髪も服もしっとりと水気を帯びていた。着替えもせずに幸鷹についていたのだろうか。顔色は青ざめ、決して明るいと言えない表情でゆっくりと窓際に立つ鷹通に近付いた。
「・・・あの、幸鷹さんは・・・・」
 恐る恐る訪ねると、ジェイドは真っ青な顔にいつもの苦笑いを浮かべる。
「・・・・幸鷹は・・・・・・・・もう、いない」
 鷹通は震える唇を押さえながら呟く。
「・・・・・・・・そん、なっ・・・」
「藤原・・幸鷹は・・・・いないのだよ・・・・・・・どこにも・・・」
「・・・私が・・・・あの時・・・手を・・・・」
 ジェイドに取って、あれだけ献身的に世話をしていたという事は、幸鷹が大切な主だったに違いない。出会って数日の鷹通でさえも、彼の気質は見ていて清々しかった。なのに、そんな人間を、自分の不注意から死なせてしまうなんて。
「・・・・・・・私・・が・・・」
「・・・あれが、不可抗力だということは私にも判っているさ・・・・だが・・・」
 前髪をかき上げながら、ジェイドは鷹通の寝台に座り込んだ。
「本当に幸鷹がいなくなってしまった今・・・・・・星の都との和平
 は、決裂も同然だ・・・」
 幸鷹が願っていた、自分の身を賭してまでも成功させようとしていた、星の都と天の都の恒久的な平和。
 ジェイドが自分を責めない事が、不思議だった。あの時の表情。あの幸鷹を抱え上げた時の表情が、今でも鷹通の瞼に焼き付いて離れない。責められない事が、逆に鷹通自身を自責の念に追い込んで行く。
 そしてそれは、身代わりを続ける決意を固めるのに充分であった。









20050201





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