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■ 銀 Z ■



「準備は?」
「出来ている」
 相変わらず泰明は完璧だと、からかうように微笑みながら友雅は館を出た。
 港は厳戒態勢が敷かれ、周囲には許可された者しか立ち入ることは出来ない。その警備の最中、友雅が通る事で大きく道が開かれてゆく。ここまでの警備網を見るのは、友雅も初めてであった。
「ちょっと大袈裟じゃないのかい?」
「問題ない」
「・・・・・そうかな」
 泰明に取っては、だろう?と小さく呟きながら、友雅は苦笑いした。この物々しい体勢を見て、あの天の総督殿がどんな顔をするのかと思うと、それはそれで面白いのだが。
 出会った日から二ヶ月。それからは一度も天の総督と直接見えたことはなかった。代行同士の交わす仰々しい手紙の遣り取りを経て、この日が決められた。
 相変わらず、どうでもいいとは思うのだが、友雅の中で微かな好奇心が沸いているもの事実であった。だが、それもいつものこと。暫くすればまた、違う方向へ感情が向く自分がいることもよく判る。
 それでも。
「間もなく、船が着きます」
「・・・・・・・そう」
 伝令の言葉に何気に答える友雅に、泰明はぽそりと呟いた。
「楽しそうだな」
「・・・そうかな」
「そうだ」
「・・・・そうか」
 港の風は、いつもよりも優しく吹き抜けた。







20050201



金色の天と白銀の星

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