金色の天と白銀の星



■ 金 V ■



 鷹通は全力で走っていた。何処へ?自分でもどこをどう走ってい
るのか、全く判らない。いつもは判断が出来るはずのことも、頭が
混乱して冷静さを欠いている。目に付く角をとにかく曲がり、知っ
た筈の街なのに、どこをどう移動しているのか自分でも判らなくな
りそうであった。足元が覚束無くなり始めた頃、一つの建物の角を
曲がると、
「・・・・・・・?!」
目の前に黒い壁が立ちはだかった。
 全身に大きな衝撃が走る。何かに跳ね飛ばされるように、鷹通は
地面に転がった。
「・・・・大丈夫かい?」
「・・・・・・・・・・っ・・・・・・」
 慌てて身体を起こすと、
「怪我は?」
逆光でよく見えないが、男が手を差し伸べていた。
「・・・・だ、大丈夫です」
 差し出された手を掴みながら、鷹通はゆっくりと立ち上がった。
「そう、ならば良いけど」
 肩にかかった、真っ直ぐに伸びた長い髪を払いながら、男は微笑
んだようだった。
「す、すいません!急ぎますので・・・・」
 鷹通はぺこりと頭を下げると、男の脇を抜け再び走り出した。
 その後姿を、男は黙って見詰める。完全に鷹通の背中が見えなく
なると、
「・・・・・・奇跡が、起こったようだよ・・・・・・」
ふふ、と微笑む男は誰に伝えたかったのか、小さな声で呟いた。

 鷹通は走りながら考える。先程、男とぶつかったことで逆に冷静
になった自分がいる。闇雲に走っていても逃げ切れるかどうか判ら
ない。ともかくこの場から離れるのに一番良いのは、この都から離
れること。
 そのためには・・・港。
 そう判断すると、鷹通の足は海へ向かっていた。









20050121





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