金色の天と白銀の星



■ 絢 Z ■



「牢に入れるのも憚られた」
 そう言いながら、泰明が向かったのは古い書庫として利用している部屋だった。鷹通が追いつくと、入口の警備が二人、ピッと敬礼をして立つ。それは泰明が口が固いと信頼した選り抜きの者である。
「開けろ」
 泰明の言葉に、鍵を開ける。がちゃりと開くと、中から黴臭い空気がふわっと漏れた。
「入れ」
 先に足を踏み入れた無表情の総督側近に続き、鷹通はこわごわと部屋に入る。
 室内には大きな書棚、そしてそれに入りきらない書物が無造作に床に積み上げられていた。滅多に掃除も入らないのか、ランプにも埃が掛かり、従来よりも薄暗く部屋を映し出す。
「あれだ」
 突き当たりに、書物に紛れて俯き座り込む人影が、ぼんやりと浮かんでいた。
「あれは、お前の見知りの者か?」
 泰明に問われ、鷹通は恐々その影に近付いた。深くフードを被り、所々薄汚れた衣服。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 近付く気配に気付いた人影が、ぴく、と揺れ、ゆっくりと面を上げる。
「・・・・・・・・・・!!」
 こちらを向いた顔を見て、鷹通は声を吸い込んでしまった。
「・・・何故・・・・・・・・・・・・・」
 あまりの衝撃に、言葉が上手く出ない。
「・・・・ここは、星の都・・・?」
 薄汚れたフードに身を包んだ人物は、力ない声でぽつりと呟いた。間違いなく聞き覚えている、その声。
「・・・・・・あ・・ぁ・・」

 その場に立ち尽くす鷹通に、

「・・・・貴方は、私を・・・知っているのか・・・?」

以前のような精彩を、完全に欠いた声で、うつろな瞳の幸鷹が呟いた。









20050305





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