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■ 鈍 U ■



 詩紋の心遣いは、鷹通に取って感謝以外の何物でもなかった。
 知人もない、この星の都で、唯一信頼に足る純粋な心を持った少年の事を、鷹通は心から信頼し、再び自室に戻る。
 友雅に見つかったら厄介だと思い、隠れるようにしながら部屋の扉を開けると、灯も点けないまま眠っているふりをしようと寝台に近付く。その時、
 カタリ
窓辺からの小さな物音に、はっとなり振り返った。
 ふわりと影が揺れ、
「・・・ジ・・」
言い終わる前に鷹通の身体が寝台に突き飛ばされた。
 両腕を頭上で組み上げられ、押さえ込まれる。声を上げようとした口端に、ひんやりとした感触が押し付けられ、鷹通は息を吸い込んだ。
「久しぶりだね」
 口元だけ笑うその表情に、鷹通の背筋が凍る。
「・・・・ジェイド・・・」
「挨拶もせずに、失礼したね」
 鷹通の顔に押し付けたナイフを引こうともせずに、ジェイドは淡々と言葉を継いだ。
「お元気そうでなによりだ」
「・・・一体、どういうことですか」
「何が?」
「とぼけないでください!」
 一瞬、驚いた顔をするが、ジェイドはすぐにまた渇いた微笑みを浮かべた。
「何のこと?」
「どうして、あんな嘘を・・・どうして、幸鷹さんが、死んだなんて・・・!」
「嘘じゃない」
「・・・・・・?」
「彼は、『藤原幸鷹』を、心で殺してしまったのだから」
 ふと哀しげな笑みが垣間見えるが、その表情をジェイドはさっと潜める。ナイフを引いたかと思うと、捉えていた腕をぐいと引き寄せた。強引に鷹通を寝台から降ろすと、
「さぁて」
「・・・・・・っ、・・」
腕を背で捩じ上げ、首筋に再び閃く銀刃を寄せる。

「そこまで案内していただこうか、『幸鷹殿』?」
 刃のひんやりとした感触に似た、ジェイドの冷たい声が、鷹通の耳元で響いた。







20050320



金色の天と白銀の星

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