金色の天と白銀の星



■ 蘭 T ■



 さて、如何程前のことになりますでしょうか。
 先代の星の総督は、切れ者と評判ではございましたが、愚か者との噂もまた多々ございました。
 女性に節操がなく、誰彼構わず閨に引き込まれますので、後の災いが後を絶たなかったものでございます。

 「血は抗えませんね」とは、後々この話を聞かれた鷹通殿の率直なご感想でございます。それに対し、友雅殿がどのようなお顔をされたかは定かではございませんが。

 方々に浮名を馳せた総督は、いよいよ、然る貴族の美しい姫を正妻として娶ることとなりました。
 しかし、その姫にも少々の、何と申しますか、問題がおありだったのです。
 双子でいらした姫君は、並び立たたれますと、全くと言ってよい程姉妹の区別がつかぬお顔立ちでございました。しかも、ご実直な姉姫とは正反対に、妹姫はかなりの野心をお持ちでございます。
 妹姫様は、ご自分が総督の妻となることを、それはそれは夢見ておられたようで、姉姫様が総督に見初められたとお知りになると、並々ならぬ妬みが湧き上がっておられたようでございます。
 ですが、懸念されたお父上が、妹姫も早々に貴族の殿方へ嫁ぐようにと取り計られ、表向きには事態は解決の途に向かっていたかと思われておりました。

 ところが。

 姉姫がお体を崩されて臥せっていらしたある夜、妹姫は姉姫の名を語り、総督のご寝所へ忍ばれたのでございます。
 お気づきにならない総督は、妹姫を妻と思い、夜を共に過ごされました。そして、妹姫は思惑通りに、総督の御子を身籠られたのでございます。
 その事実を、総督は妻にひた隠し、隠匿と引き換えに妹姫とその夫に多大な援助を約束しました。
 そして一年の後、姉妹はほぼ同じ時期に御子を産み、二人の男御子が産声を上げられたのでございます。
 男御子方をそれはそれは大切に育まれ、間もなく御歳四つとなられました。その頃には、姉姫も妹姫も互いの屋敷を行き来なさって、ご子息同士も、まるで御兄弟のようにあらせられました。

 その様子を見止められた総督は、お二方の間の、いいえ、妹姫様の確執は立ち消えたものと思われたのでございます。









20050419





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