金色の天と白銀の星



■ 絢 ] ■



 ようやく友雅の中で合点がいった。
 幸鷹の仲があれほど噂されていたにも係わらず、ジェイドがあっさりと離れていった事。
 そして、自分が閨に引き込んだ『幸鷹』が、ジェイドと全く関係を持ったことがないと言い切った事。それが事実だと、身を以って悟った事。
「ここまでそっくりな顔を見出せたのは、奇跡だった・・・ねぇ、鷹通」
「・・・・・・・・・・」
 鷹通は押し黙る。
「・・・では、君が金細工師の・・・」
 ジェイドはふふ、と笑うと、鷹通を腕から突き放す。急に押し出された体はふらつきながら、友雅のすぐ横へ倒れこんだ。
「大丈夫?」
「は、はい・・・」
 手を貸され、鷹通はその場に立ち上がる。
「・・・・友雅殿・・・すみません・・・」
「幸・・・いや、鷹通だったね」
「・・・あなたを、騙しておりました」
 ふっと溜息にも似た笑いが、友雅の唇から漏れた。
「本当に、まんまと騙してくれたよ・・・しかし」
 ジェイドに目線を向けると、彼は冷たい笑みを浮かべながらこちらを眺めている。
「君を咎める権利はないよ・・・私も同罪・・・いや、それ以上の罪を犯し
 ているのだからね」

 もう二十年以上前のことであるのに、友雅は鮮明に覚えていた。

「そうだろう、従兄弟殿・・・いや」
 弟と呼ぶのが相応しいのか

 そう友雅に問われ、さぁ?とジェイドは首を傾げた。
「もう忘れていたよ、そんな昔のことは」
 くく、と笑いながら、ジェイドは顔にかかった髪を耳に流す。
「言われてみればそうだったか、私の母は、あなたの母君の姉だったね」
「ああ、そうだ」
 軽いジェイドの返事とは裏腹に、友雅の声は重々しく響いた。

「私の母が、君と私の運命を・・・入れ替えてしまった」

「・・・友雅殿・・・・」
 その言葉だけで、鷹通は何かを察した。

「なるほど、そういう事だったか」
 微かに開いた扉の隙間から、友雅に取っては聞き覚えの深い声が滑り込んで来る。
「では、私の仇は・・・あなたではなかったか」
「・・・・アクラム」
 その名を呼ばれた男は、愉しそうに友雅からジェイドへと視線を移す。
「まさか、あなたが待ち焦がれた御人だとは、夢にも思わなかったものだが」
「・・・・その思い、慎んでご辞退申し上げたいね」
 戯れめいたジェイドの言葉を、アクラムがどう受け取ったのかは、仮面に阻まれて察することは出来ない。
「さて、困ったね・・・では、どうやってここを出ようか」
「簡単なこと、死体となって運ばれるのが懸命ですよ」
「・・・それもご辞退申し上げようかな?」
 アクラムの口上に、ジェイドはふっと口の端を上げた。
「貴方の話は後だ・・・さて、そこにおられる総督補佐・・・いや、金細工師よ?」
 久しく呼ばれなかった呼称に、鷹通は眉を顰めた。
 カチャリと、金属音が狭い室内に響く。

「その罪人を引き渡していただきましょうか・・・『総督』?」

 手に握られた銃口が、薄暗いランプの灯で、鷹通に向けて鈍く光った。









20050509





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