金色の天と白銀の星



■ 蘭 U ■



 双子の姫君の男御子お二人は、それは母君によく似たお顔立ちでございました。
 つまりは、御子方もまるで双子のように瓜二つであったという事でございます。
 二人でご一緒にいっらしゃると、お世話係の殆どの者がどちらが総督の御子でらっしゃるのか、見分けられず困っている光景が、ままございました。
 そしてそれは、妹姫の一度は小さく燻った野心に、再び油を注ぐきっかけとなってしまわれたのでございます。

 妹姫様が、何故そこまで権力という名の元に固執なさるのかは、定かではございません。ですが、妹姫のことをお訊ねしますと、「あれはあれで、悲しいひとだったのだよ」と、友雅殿は少し淋しいお顔をなさって、多くを語られようとなさいません。

 ある、肌寒い夜のこと。
 総督のお屋敷から、炎が上がったのでございます。それは、見る見る広がり、あっという間にお屋敷を赤いベールで包んでしまいました。
 総督は、辛うじて失命は免れたものの、生死の境を何日もの間、彷徨われました。奥方様と最愛の御子もその炎に焼き尽くされ、焼け跡からもそのお姿は見つかりません。
 その日は、妹姫とその御子もお屋敷にご宿泊なされておりましたが、やはり焼け跡からは、お二人のお姿もございませんでした。
 ところが、お屋敷から微かに離れた湖の傍に、総督の御子と姉姫がお倒れになっているのを、総督府の警備が発見したのでございます。
 姉姫は、巻き込まれる炎の中、総督の御子をお助けするのが精一杯で、妹姫とその御子がけぶる炎に融けていってしまわれる様を、なす術もなく見詰めるしかなかった、と仰います。
 助け出された御子は、髪は炎でちりぢりと焼け、体中に小さな火傷が散乱し、また、炎のショックからか、殆どお口を開けられませんでした。そんな御子を、姉姫は熱心に慈しみ、看病されたのです。
 その甲斐あってか、数ヶ月の後にお体は健やかになられ、総督も安堵からか徐々に回復されたのでございます。
 そして、家督を譲るお心を決められたのでしょう、側近殿へ、御子に様々な教育を施されるよう仰せられました。
 火事のショックからか、御子は時折不可思議なことをおっしゃいはしましたが、乾いた土に水を吸い込むように、多くの知識を得られたのでございます。

 そんなある日のこと。
 お館に炎が上がったのは、何者かの姦計ではという噂が、実しやかに流れ出したのです。それは、姉姫のある一言が発端でございました。
「あの日、夜半に寝付けずに窓の外を見たところ、ある男が手に松明を持って屋敷の裏口を徘徊しているのを見た」、と。
 そして、その男というのは、総督の側近殿が甚く重用していた召使だったのでございます。









20050626





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