金色の天と白銀の星



■ 絢 11 ■



「白虎のブローチを隠匿した罪・・・更に、天の総督に成りすましているなど、重罪であるな?」
「それは、違うっ!」
 鷹通は首を激しく横に振った。
「天の総督と謀っていた事は事実・・・その罪は潔く認めましょう、ですが!」
盗みは断じて、と揺ぎ無い眼差しでアクラムに言い放つ。
「罪人は得てしてそう言うもの・・・言い訳は聞かぬ」
「アクラム」
 友雅の声が割って入る。
「言ったはずだが、材料が少なすぎる、と」
「確かに、貴方は仰った・・・だが」
 アクラムは一瞥すると、
「総督でもない貴方から、そんな事を申されても・・・さて、如何様にも」
くく、と喉から笑みを漏らした。
 その言葉に、友雅は微かに眉を顰める。
「それに、私にはどうでも良いのだ・・・おまえが本当に盗んだのかどうか、など」
「・・・・・どういうことですか?」
「罪人が死ねば、ブローチは行方知れずのまま・・・誰もそのありかを知らぬまま」
「・・・・・・・まさか・・!」
 鷹通は拳をきゅ、と握り締めた。指先が言いようのない感情に震える。
「天の総督の偽物が純金のブローチを隠匿し、更に星の総督を殺めて逃 げた・・・もうすぐ、都中にその話題が駆け巡るという訳だ」
「あなたは・・・私に全ての罪を被せる気で・・・?!」
「・・・さあて?」
 声高に笑うアクラムに、友雅も吐き捨てるように呟いた。
「君を少しでも信頼していた私が、浅はかだったようだ」
「・・・それは、私の父が貴様等の父親に言うべき言葉だ」
「やれやれ」
 緊迫の只中、ジェイド一人は表情を変化させず、幸鷹の前に壁になるようにゆっくりと動いた。
「だからと言って、私のことも殺すおつもりなのだろう?納得出来かねるね」
「選ぶ権利があるとお思いか」
 仮面の向こうの青い瞳が、鈍く光る。
「お前等の父親は、私の人生を崩壊させたのだ!」
 アクラムは唇を震わせた。
「在り得ぬ罪を被せられ、自害に追い遣られた父の無念・・・罪人の妻、罪人の子と、罵られ生きてきた私と母の苦しみ・・・どんなに言い表しても言い尽くせぬ・・・それを、やはり間違いだったと・・・?!まるで何事もなかったかのように、母と私にその地位を戻し、それで罪滅ぼしをしたような気分に成り下がって・・・」
 自己満足にも吐き気がする。そう汚らわしそう嘲るアクラムに、

「それこそ、自己満足でしょう」

最初に口を開いたのは
「・・・ほう、ただのお飾りでなかったと見える」
 ジェイドの背後にいたはずの人物であった。

「幸鷹さん・・・?」
 鷹通の目には、初めて出会った日と同じ、総督たる顔が見える。
「・・・幸鷹?」
 ジェイドが背後にちら、と目線を向ける。幸鷹はそれを受け流した。
「別に、あなたが何を考えようが、それはあなたの自由。受けた仕打ちも、確かにいわれのない、運悪く流れ矢が飛んできたようなもの。気の毒だとは思います。」
 すぅっと、その身が自然に動き、ジェイドの前に立つ。
「しかし、自分が受けた仕打ちを人に返すことは、自分もまた、忌み嫌う相手と同じ行為をしていることになりませんか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それで、あなたは本当に満足を?いや、何をどうしても、満足する方法などありませんね。あなたの父君が生き返る訳でも、人生が逆戻りするでもない。」
「何が、判るというのだ・・・のうのうと楽に生きてきた人間に・・・」
「そうですね、わかりません」
 あっさりとした返答だった。
「私には、あなたと同じ苦しみは決して理解できない。だが」
 一度俯き、ふっと溜息を吐くと、
「少なくとも、あなたの敵討ちを黙って見過ごす訳にはいかない」
少しだけ目線を背後にめぐらせ、すぐさま正面に向き直った。
「戯言を・・・」
「いえ、本気です」
「どうすると?」
「止めます」
「・・・ほう」

 幸鷹の目線は、真っ直ぐにアクラムを射抜く。

「あなたを、止めます」









20050626





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