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■ 金 W ■ 港の端にあった案内所で、鷹通は船の時刻を確認していた。この 時間ではやはりあの天の都行きの船しかなかった。仕方なくその場 を離れながら、鷹通は考えていた。同じ領地内の隣島辺りへ行くぐ らいが最良なのだが、その船の時刻まで果たして追っ手が待ってく れるのだろうか?港酒場の路地裏に座り込み、鷹通はあれこれと思 考を巡らせた。 「何か、探しているの?」 先程聞いたのと全く同じ台詞。鷹通が顔を上げると、同じ顔があっ た。ただし、その髪は真っ直ぐ伸びており、街角でぶつかった方の 男であると、鷹通にはすぐに判った。 「・・・・・・貴方は、先程の・・・」 立ち上がり、言い掛けた鷹通の口に、ふいに白い布が押し当てら れる。 「・・・・・?!・・・に、を・・・」 目の前の男は微笑んだままである。もがく鷹通の腕を押さえつけ、 口を塞いでいる筈なのに、表情が一向に変わらない。 「すまないね」 全くそうは思っていないであろう物言いで謝罪するが、その言葉 は最早鷹通の耳には届いていなかった。意識は確実に遠のき、全身 から力が抜け、その場に座り込む格好になる。男はそれをごく自然 に支えると、鷹通を横抱きに抱き上げた。 「・・・見つけたよ、幸鷹」 意識の沈んだ鷹通の耳元で呟くそれは、彼ではないその向こう側 の誰かに囁かれていた。 20050121 |
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