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■ 朱 V ■ 「ねぇ、イノリ君!!まって」 「んだよ、詩紋」 背後からの声に、振り返ることなくイノリは答えた。 「僕、戻らないと!」 思わぬ言葉に、 「はぁ?!」 イノリは急に足を止める。二人の様子に、少し先駆けていた天真も振り返った。 「わあ!」 イノリの背中に詩紋が激突し、そのままイノリが反動で前へつんのめった。 「いってぇ!」 「ご、ごめん!」 「いいって、オレが急に止まったんだしよ」 で、ナンだって? 真っ直ぐに眼をぶつけられ、詩紋は一瞬戸惑う。 「・・・僕、戻らなきゃ」 「なんで?!」 「まだ、幸鷹さんが中にいるかもしれない!」 「いるわきゃねーだろ?!この炎だ、とっくに逃げてるって!」 「でも・・・!」 セフルの様子からして、幸鷹の気にかけていた罪人に、何か起こっている可能性がある。 「行かなきゃ!」 揺ぎ無い思いに、 「・・・・しゃーねーな」 イノリは諦めたと言わんばかりに、前髪をくしゃくしゃと掻き毟った。 「行くか!」 「イノリ君?!」 「ここまで来て、『イノリ君は先に逃げて〜』とか言うんじゃねーぞ」 「・・・・・・・・・・・」 白い歯を見せて、ニヤリと笑うイノリを、詩紋は暫しぽかんと見詰めていたが、 「・・・うん」 きゅ、と口を引き結び、首を縦に振った。 瞬間、どん、という大きく弾ける音が響き渡った。 「・・・・・・幸鷹さん!!」 走り出す詩紋を、 「バカ野郎!!」 イノリは背後から肩を掴み、 「・・・・・もう、無理だ・・・!!」 「・・・・・そんな・・・」 しっかりと抱きすくめるように、震える詩紋を支えた。 20051015 |
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