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■ 蒼 W ■



 がちゃりと鍵を回し、鍵穴から抜き取ると、アクラムはそれを懐に収めた。ふ、と渇いた笑いを浮かべると、扉に背を向ける。
「待て」
 廊下の影から、低い声が響く。
「・・・・・・何者」
「『天の総督』は、どこだ」
 頼久は手にした刃先を、アクラムに閃かせながら、再び低い声を響かせた。
「天の総督?」
「どこだ」
「あぁ、あの偽物のことか?」
「・・・・・どこだ」
 瞬間だけ眉を歪めた頼久に、意味深は笑みを浮かべると、
「覚えておらぬ」
あっさりと呟く。
「いちいち、虫の行動を追っている訳にもいかぬのでな」
「虫ではない」
 頼久は、構えていた刃をすぅっと鞘に収める。
「偽物でも、ない」
「・・・・・・・・・」
 頼久の言葉の意図が掴めず、アクラムは仮面越しの眉を顰めた。
「貴様、ただの細工師ではないな」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 再び、頼久は腰の柄に手を掛け、片足をすっと背後に下げる。その抜刀の構えに、アクラムはふっと息を漏らした。
「・・・その太刀筋」
「・・・・・・・・・・・・・」
「『風』と、同じ筋」
「・・・あの方は、どこにおられる」
「縁か」
「どこに、おられる」
「そうか、だから」
よく似て。
 ふふ、とアクラムは口元を歪めた。
「『風』が守りとなる、あの偽者は、もしや・・・」

 瞬間、どん、という大きく弾ける音が響き渡った。

 総てを語るよりも、それが先であった。






20051021



金色の天と白銀の星

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