金色の天と白銀の星



■ 絢 15 ■

 数ヶ月、手入れのされなかった室内は、帰ってきたばかりの頃は多少埃臭い空気を交えていた。
「・・・一先ず、掃除ですね」
 そう言って、ようやく何とか形のつくところまで片付いた我が家を、愛しいものでも見詰めるように見回すと、鷹通はそんな労も嬉しそうに息を漏らす。
 本当に、この数ヶ月で怒涛のように様々な出来事が押し寄せた。

 盗っ人の疑惑をかけられ。頼久が重症を負い。幸鷹の身代わりを強いられ。友雅にも出会った。そして、何もかもが終焉を迎えた今、頼久はこの家を去り、自分だけが取り残された。

 あの爆発の最中。

 閉鎖された空間で行き場を失った熱が、外界に飛び出さんと破裂したのであろう。廊下の遠く向こうから、激しい振動が響いた。
 それと同時に、扉が外から蹴破られるようにバンと開くと、風のように頼久が舞い込む。
「頼久?!」
「ご無事で」
 静かに佇む人物に、鷹通は慌てて駆け寄った。ここ暫く、寝台に横たわる姿しか見せなかったはずの男が、こうして立ち上がり、鷹通の目の前に居る。感慨と不安の入り混じる思いで、その腕と掴んだ。
「傷は・・・」
「これしき」
「・・・・よかった」
「でも、どうしてここに?どうやって扉を・・・」
 扉の外で何が起こったのか、頼久は何も語らなかったが、鷹通の姿に安堵の笑みを浮かべたことだけは確かであった。
「鷹通」
 背後から、友雅が静かだがあやすように名を呼んだ。
「今は、ここを出ようか」
 話しは、後でまたゆっくりと、ね?
「・・・は、はい」
 友雅に当たり前の事を諭され、鷹通は子供のように目の前の現実しか見なかったことを、少し瞼を伏せて、恥じた。
「頼久、と言ったね。廊下を通って外へ出られそうかい?」
 友雅に問われ、
「炎が広がっております。相当危険かと」
 そう、と残念そうに呟くと、友雅は先程不可思議な事を呟いたジェイドの方を見遣る。
 もうあまり、大きな声を出せない様子のジェイドの口元に、幸鷹が彼を支えながら、己の耳を近づけ、声を拾う度に小さく頷いた。
「友雅殿、その辺りの足元に、白い小さな敷石はありませんか?」
 幸鷹の言葉に、皆一斉に足元に視線を落とした。
「小さいとは、どのくらい?」
「・・・・・・大人の爪程度だそうです」
「これ、ではありませんか?」
 床に手をつき、鷹通は指差した。その先には、確かに小さく丸い敷石が嵌っている。他の石は、総て灰色や黒ばかりで、白は比較的目に付いた。
「それに、何かあるのかい?」
「・・・・抜け道の印だそうです」
 その言葉に、鷹通のしゃがみ込んだ横に友雅も腰を下ろす。頼久も反対隣に添うように膝をついた。
「・・・・・その石のすぐ隣に、ほぼ正五角形の敷石があるはずです。大人の男が二人立ってもまだ余裕のあるくらいの」
「・・・・これか」
「白い石に一番近い角を頂点に、中に三角を作るようにして・・・」
 幸鷹の声に合わせて、友雅の指が三点の角を辿る。
「そう、その角三箇所に・・・三人で同時に力を掛けてみてください」

 がたん。

 重厚な軋みと共に、敷石が斜めに傾いた。


「急に黙り込んで、どうしたの」
 真後ろから響く、回想を遮った思いがけない声に、鷹通は慌てて振り返った。











20051104





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