金色の天と白銀の星



■ 金 20 ■



「失礼する」
 声と同時にがちゃりと扉が開き、幸鷹は慌ててジェイドを引き剥がした。
「邪魔したか」
 さして思いもしない表情のまま、泰明は寝台に近寄ってくる。
「とんでもない!」
「・・・邪魔だね」
「ひ・・総督!」
「・・・・手短に済まそう」
「頼むよ」
 泰明は、手にした封書から一通の書を開いた。淡いブルーのそれは、質感だけでも上品さを漂わせ、木目細かい型押しの施されたものである。
「再来月、水の都の総督が代替わりする」
「水の、総督が?」
「披露目への招待状だ」
 幸鷹は、不思議そうに首を傾げた。
「総督・・・永泉殿は、確かまだ一年も就任されていないのでは?」
「確か、昨年の冬に披露目の式典があった」
「では、何故?」
「・・・・・・・・・・・・・」
 泰明にしては珍しい、少々苦い思いを含んだような沈黙。
「逃げたのだ」
「・・・・はぁ?!」
「荷が重いと、先月、自ら願い出た」
「・・・・・荷が、重い・・・」
「後任も、あまりの出来事に卒倒したらしく、暫く伏せっていたらしい」
「・・・・はぁ」
 幸鷹はあまりの内容に、ただぽかんとするばかりであった。
「再来月ならば、総督は出席できるのか?」
「さぁ、どうだろうね」
「私が名代で参ります」
 思い出したように、すぐさま幸鷹が口を挟む。
「総督は、このお体です。無理を強いられては困ります」
「そうか」
 泰明は書を封筒に戻すと、
「皆は、その顔であれば良い。魂の色など気にならぬらしい」
 であれば、私は『どちら』でも構わぬ。
「泰明殿」
「問題ない」
言い残し、部屋を後にした。









20051108





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