眠る森[4] |
残された私は、そっと赤い部屋に足を踏み入れる。 思ったより中は薄暗かった。右手奥に置かれた行灯だけで灯を取っているようで、他には一切の照明器具は見当たらない。ビロードに反射して明るく見えただけなのだろう。 部屋の中央には、布団が一組敷かれていた。赤い布を反射し、薄赤い色に見えるが、布団自体は恐らく生成りだと、思う。 掛け布団の上に、白く伸びた腕が乗せられていた。 「こんばんは」 一応、声をかけてみる。 「・・・・・・・」 だが、規則正しい寝息が応えただけであった。 布団に眠っているのは、少年なのか、青年なのか。微妙な歳に感じた。 右腕を布団の上に乗せて仰向けた身体は、さほど寝乱れてもおらず、肩より少し上に切り揃えられた亜麻色の髪が、枕の上に広がっていた。白い肌が、眠りのためだろうか、上気したようにほんのり赤く、艶を醸し出している。 枕の脇に眼鏡が折りたたまれて置かれている。普段は眼鏡をかけているのだと思った。 「・・・・・・・・・・・・」 そっと布団の端を捲ってみる。白い胸が露に視界に飛び込んだ。 「本当に、裸なのだねぇ」 誰に言うでもなく、一人呟くと、 「さて、どうしたものか・・・」 本気で困った。 ■ NEXT ■
2005.07.21
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