眠る森[8]


 もしかしたら、私はこの少年に同じことをしようとしているのではないのだろうか。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 突然苛まれた罪悪感に、私は胸に置いた手を離した。
 再び少年の横に寝転がると、ふぅ、と大きな溜息を吐く。
 眠ろう。
 そう決心すると、枕元の丸盆を引き寄せ、上体を起こす。移し紙を開いて、白い粉を一気に喉に落とし、水差しからグラスに移した水で流し込んだ。
 後口の悪い苦味が残り、一瞬、むせそうになるが、もう一杯水を汲み、再び喉に流した。
 一息ついて、もう一度布団に包まった。
 呼吸一つ乱さない少年の胸に、今度は掛け布団の上から手を置いて、まるで幼い子をあやすように、ぽん、ぽん、とゆっくりとしたリズムを刻む。
 閉じられていた少年の唇が、微かに開き、ふっと呼吸を漏らした。
 布団に掌が弾む音が、少しづつ遠くなってゆくように感じる。眠る横顔を再び眺め、この子の瞳はどのような色をしているのだろうと、思いをはせながら、私の瞼は落ちていった。



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2005.07.21


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