Rebersible Man 10





 幸鷹は、落ちて行くグライダーを必死で目で追った。
 だが、途中から木々に阻まれ、その姿は途中で見失うことになってしまう。
 ジェイドは車のブレーキを踏み、車体をゆっくりと停めた。慌てて幸鷹は、きょろきょろと周囲を見渡す
が、白虎の姿はもうどこにも無かった。
 一体何にひっかかったのか、何も無い空中で急に白虎は平衡感覚を失い、落下。

「あぁ・・・あれに引っ掛かったみたいだね」
「・・・・・・・・?」
 何時の間にかカメラを抱えたジェイドが、望遠レンズの向こうに何か見つけたらしい。幸鷹も目を
凝らして探してみるが、何も見えなかった。どんなに凝視しても空には何もない。
「・・・・何があるのですか?」
「うん・・・・だが、見えないだろうね、あれは・・・・」
「・・・・・・・・?・・・『あれ』?」
 レンズの向こう側にあるのは、大きな『澱み』であった。空間がゆるゆると渦を巻き、小さな旋風を
起こしている。
 ジェイドもカメラを構えた時には見えるが、レンズを通さなければ唯の闇夜にしか見えなかった。
 映るものかどうか、まぁ撮っておこうかと思いながら、シャッターを何度か切る。

 暫くはその姿を眺めていたが、ジェイドの曖昧な返事と動きに幸鷹はイライラを隠せなかった。
「降ります、乗せていただいたことに感謝します」
 そう言い、ドアに手を掛けた瞬間、
ガッ、
と、車のドアが集中ロックによって閉められる。

「・・・・・・・?!・・」

 何を考えているのか読み取れない笑みを浮かべシャッターを切り続けるジェイド。よく見るとその
肘でドアロックを掛けたのであった。
「・・・・ふざけないでもらいたい」
「そう恐い顔をしないでくれたまえ、こちらの話がまだだったのでね」
「・・・何の話ですか、私は急いでいるのです」
 眉を顰めてこちらを睨みつける幸鷹を、ジェイドはレンズ越しに愉しそうに眺める。

「君をね、撮ってみたいのだよ」

「・・・・・・・は?」 

 一瞬、幸鷹は意味を理解出来なかった。
「だからね、君をモデルにしたいということ」
「・・・・・・・・・刑事のドキュメントでも撮りたいなら、広報を通してください」
 そうくるか、とジェイドは胸中で思わず呟いた。
「刑事には興味はないよ・・・・君を個人的に撮影したい、それだけだ」
「・・・お断りします」
「・・・・・・・・即断だね」
 ばっさりと切り捨てられ、ジェイドはカメラで幸鷹を捉えたまま苦笑いする。
「失礼」
 幸鷹はドアロックを外すと、ドアをガチャリと明け車を降りる。そのままばたんと扉を閉めると、振り
返ることもなく走り去って行った。

「・・・やれやれ、なんて冷たい」

 小さくなってゆく背中を、カメラのシャッターを切ることのないまま、ジェイドはくすくすと笑いながら
捉えていた。






2004.10.02 


ジェイド玉砕。
残念ッ(笑)







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