Rebersible Man 12






 白虎が見えなくなったのはこの辺り。
 幸鷹はその位置を確認しながら、周囲を見回した。

 まったく、いいタイムロスである。ジェイドとかいう妙なカメラマンのおかげで、ここまで白虎を追って
こられたものの、逆にそのせいで白虎を追うタイミングを逃した。

 とにかく、まだあの屋敷の周りで右往左往しているであろう連中に、この場所を連絡しなければな
らないと思い、携帯電話の発信ボタンを押す。

「・・・・・・・白虎は移動した!今から場所を言うから、直ちに応援を向かわせるように!」

 この辺り一帯は住宅街でマンションが立ち並んでいる。幸鷹はあまり広くない路地を歩き回り、白
虎の痕跡を探した。
 空き地になっている叢の横を抜けようとした瞬間、なにかがきらりと光る。
「・・・・・・・!」
 がさがさと分け入っていった先に、
「・・・グライダー・・・」
間違いなく白虎のものであろう。
 幸鷹は再び携帯を取り出すと、鑑識班を回すように指示を出した。

 人の姿は見当たらないことから、木や建物に引っ掛かったか、運良く軽傷で逃げたか。どちらにし
ろ、あの高さからの落下では余程のことがない限り命まではどうこうなりはしないだろう。
「・・・虱潰しに行くしかないですか」
 近場のマンションから一軒ずつ目撃情報を探すしかないと、再び歩き出す。
 さすがにもう夜中。呼び鈴を押しても出ない家もあれば、寝ているところを起こされ不機嫌になる
住人もいた。その上、まともな情報は全く得られなかった。
 3つ目のマンションはオートロックで、玄関先のインターホンを何軒か鳴らしてみた。やはりほとん
どが無反応である。さすがに一人ではこの辺りが限界かとも感じ始めていたが、どうせならこの建物
まではと幸鷹は再びインターホンを押した。

ピンポーン

 反応がない。やはりここもだめかと思った瞬間、
『はい』
低い声がインターホン越しに返って来た。
「夜分にすみません、警察の者です」
『何か?』
淡々とした返答である。
 こんな深夜であれば、それも当たり前かもしれない。だからと言って、幸鷹もそこで尻込みする訳
にも行かなかった。
「この周辺に、怪しい人物が現れなかったでしょうか?」
『怪しい人物?それはどんな?』
 逆に質問されるとは思っていなかった幸鷹は、何か引っ掛かるものを感じる。
「・・・・・・・・・・いえ、若い男なのですが・・・お心当たりはありませんか?」
 わざわざ『どんな』と訪ねるからには、何かを見たのかもしれない。
 暫し無音の後、
『見ていませんね』
期待を裏切る返答しか聴こえてこなかった。インターホン越しの声は続く。
『第一ここは5階なのでね・・・窓から入るもの無理だろうから』

 窓。

 何かひっかかった。
 別に自分は不法侵入があったなどとは一言も告げていない。なのに、『誰かが入り込む』ということ
をどこかで暗示した言葉。
 だが、ここで追求しても相手も答えるはずもない。
「・・・・・・・・・・そうですか・・・夜分に失礼しました、ご協力に感謝いたします」

 プツ、とインターホンが下ろされる音を確認しながら、幸鷹は
「・・・・少し調べるか・・・」
呟いて、もう一度ポケットから携帯を取り出す。
 その時、ひらりと何か一枚の紙片がこぼれた。
「・・・・・・・・?」
 紙を入れた憶えなどない。不思議に思いながら、拾い上げて見てみると、

「・・・・・・・・・いつの間に・・・」
あの『ジェイド』の名刺であった。

 突然ひとをモデルにしたいだの、訳のわからないことを言い出した男の顔がふと浮かぶ。
 そのまま握りつぶして捨ててしまおうと思った・・・が、
「・・・・・・・・・・・」
ここまで白虎を追うことに手を貸してもらったのも事実。


 そう考え、小さな紙片をそのままポケットに無造作に突っ込んだ。








2004.10.02 


すげぇ…

ジェイド、ストーカー以上に
逆スリ…?





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