Rebersible Man 16





 インターホンを押すと、
『はい』
 昨日と同じ、低い声がスピーカー越しに響く。
「やぁ、『T』・・・元気かい?」
『・・・・・・・・・ジェイド?』

 インターホンのカメラの視界にわざと入らないよう、エントランスの柱に隠れた場所から、幸鷹は二
人の会話に耳を傾けた。

『驚いたよ、どうしたんだい?』
 その遣り取りを聞くまで、正直、ジェイドの言葉を信用していなかった。
「君が以前誘ったんだろう?」
 そう言いながら、ジェイドは幸鷹の方に目配せする。ほらね、と言わんばかりの表情であった。
 この『橘』という表札の人物と知人というのは嘘ではなかったらしい。
『それはそうだが・・・・残念ながら今日はご所望の美女はいないよ』
「それなら心配はないさ・・・・」
 ちょい、と後手の指先で幸鷹に合図を送る。こちらへ来いという仕草に見えるが、幸鷹としては今
近付くことは得策ではなかった。下手な警戒心を向こうに与えたくない。
『何故?』
 友雅の声が返ると同時に、
「・・・・・・・・・っ・・?!」
「持参してきた」
ジェイドは離れていた幸鷹をぐい、と強引に引っ張る。

「ほら、上等な一品だろう?」
 幸鷹を真後ろから抱きすくめる格好で、カメラの前に押しやった。
「・・・・・・ッ・・ジェイド、貴方はっ・・」

『・・・・鷹通?!』

 怒りの言葉を上げかけた幸鷹は、インターホン越しの声に口を止める。
「・・・・・・・・・・・・・?」
 正確には、声にではなく、その声を聞いた瞬間のジェイドの指先の力に、であった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ジェイド!」
 幸鷹の怒鳴り声に、ジェイドははっとなりその腕から彼を解放する。

「あぁ・・・すまない、少し悪戯が過ぎたかな?」
 いつもの表情。
 幸鷹は、先程感じた不穏な空気はなんなのかと探るようにまじまじと見詰めるが、ジェイドは唇に
笑みを浮かべたままで、変化ないように感じる。

『・・・・・君は?』
 インターホンから問われると、
「・・・私は、藤原幸鷹といいます」
幸鷹は半ば諦めたように、正面を向き直った。
『・・・・・・・そう』
 これでこの男には自分を覚えられてしまった。もし今後自分で捜査をしようものなら、実に動きにく
くなるのだ。
『すまなかったね、あまりに知人とよく似ていたものだから』
「・・・・・え?」

 よく似ている。
 幸鷹は先日街で出会った自分と瓜二つの若者を思い出す。
 まさか、と思うが。

『ジェイド、すまないが今日は人が訪ねてくることになっていてね・・・改めたいのだが、どうだろう?』
「・・・・・そう、それは残念」
「申し訳ない、少しお話が・・・!」
 ジェイドの言葉に被せるように幸鷹はインターホンに向かって声を掛けた。
『話?私に?』
「はい、お時間は取らせません!昨夜の・・・・・・・」
 言いかけて、幸鷹は何かに気付いたようにジェイドの方を見る。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 そのまま、ぽかんとした顔で見詰めている幸鷹にジェイドは訪ねた。
「・・・・とうしたんだい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 答えない幸鷹が、自分ではないその向こう側に眼を向けていることにジェイドも気付いた。
「・・・?」
 幸鷹の視線を追うように振り返る。

「・・・・・・・・・・あ」

 そこには、同じようにぽかんと口をあけてこちらを見詰める幸鷹と同じ顔があった。





2004.10.09 

はい!!

よーやくですよ!!(ヤケ?)







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