Rebersible Man 17






「あ、貴方は・・・・・」
 思わず幸鷹は、自分と同じ顔に駆け寄る。
「その節は失礼しました」
「あ、いいえ!こちらこそ」
 会釈程度に頭を下げる幸鷹に、鷹通は思わず深々と頭を下げ返した。

『・・・ジェイド?一体何が起こっているのか、説明してもらいたいのだが・・・』
 眼に入らない場がもどかしそうな友雅の問いに、
「・・・・・・うーん・・・上等な美人が二倍になった・・・というところかな?」
横目で鏡合わせのような遣り取りを眺めながら、ジェイドは冗談半分に答える。
 スピーカー越しに、ほぅ・・・と小さな溜息が洩れると、
『・・・・直に確かめた方が早そうだね』
ガチャ、とインターホンを置く音が聞こえた。

「どうしてこちらに・・・?」
「え、あぁ・・・・その、あちらのマンションの住人に用がありまして・・・あ」
 鷹通はそう言い掛けると、エントランスの影に隠れるように立つ男の存在に気付く。
「友・・・・・・?」
 尋ね人だと思い、声を掛けようとするが
「・・・・・・・やぁ」
軽く小首を傾げてこちらに微笑をする男が、友雅でないことに気付くのは少々時間が
かかった。
「あ、すいません・・・・知人によく似てらっしゃったので・・・人違いでした」
「・・・・・・・・・・?・・・・そう」
 ジェイドは一瞬、合点がいかないような表情をするが、またいつものように微笑みながら二人の傍
に近付いた。

「で、二人はどういったご関係?」
「・・・・・・・・・・・・・はぁ・・」
「・・・どう、と言われても・・・・」
 幸鷹も鷹通も互いを見合わせるしかなかった。
 何しろ、偶然街で一回こっきり出会っただけの、まったくのあかの他人なのだ。
 そのことを幸鷹は手短にジェイドに話した。

「ふぅん・・・ところで・・・君は、今学生さん?」
 訊ねられた鷹通は、はい、と頷いた。
 今は大学生で文学部に通っていること、一人で暮らしていること、アルバイトなどもしていること。

 自己紹介もせずに、やたらと質問攻めをしているジェイドに、そんなに興味があるならモデルも彼
にやってもらえば良いではないか、と幸鷹は胸中で呟く。
 その直後、妙に嫉妬めいたことを考えている自分が少し恥ずかしくなったのだが。

「それにしても驚きました、私が訪ねたひとが入口で立っているのかと思いました」
「・・・あぁ、『T』のことだね、私も最初は驚いた」
「・・・『T』?」
「その呼び名は知らない?」
 首を傾げる鷹通に、ジェイドは付け加えるように説明をした。
「彼はあれでもモデルなんだよ」

「『あれでも』というのは、心外だね」

「・・・・・・・・・あ」
 エントランスの自動ドアの向こうから現れた男を見ると、思わず幸鷹は声を上げてしまった。

「・・・・・・ふぅん、これは驚いた・・・」
 友雅はまじまじと幸鷹と鷹通を見比べる。
 顔はまったく映したようにそっくりで、ご丁寧に眼鏡というアイテムまでお揃いである。
 一方は、肩までに切り揃えられた髪に、意思の強そうな瞳。物腰などを一見しただけで、育ちの良
さが滲み出ていた。
 もう一方は、長い髪を後ろに一まとめにし、見守るような眼差しで周囲を見詰める。親しみ易さを思
わせる柔らかい表情であった。

「まるで、シンメトリーのようだね」
 そう言って互いを見合わせるジェイド達を、鷹通も見比べた。
 どのようにすればこういった人間が生まれるのかと思ってしまう程、綺麗な顔の造作。
 友雅がジェイドと大きく違うのは、現れただけで『華』があるという点であろうか。緩く癖のついた髪
に、思わず触れたい衝動に駆られる。
 友雅と同じ顔をしているジェイドも、恐らく女性が放っておくことはないだろう。まっすぐに伸ばされ
た長い髪が、さらさらと風に揺れる。友雅に比べて、とっつき易い雰囲気を持っている分、声も掛け
易いように思う。

「まるで、裏と表のようですね・・・」
 並びあった一対の鏡のような風景に、幸鷹も思わず呟いた。
「ここまでくると、なんだか偶然にしても恐ろしいね」
 友雅の呟きに、ジェイド以外は頷いた。
「・・・・・・?・・・・・」
 何故ジェイドだけは無反応なのだろう。
 鷹通はそう思ったが、
「こんな場所で立ち話もなんだろう」
友雅の声に促され、一同はマンションの中へと入って行った。







2004.10.09 

出会いました

よーやくですよ!!(ヤケ再?)







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