Rebersible Man 24






「まずは、何故私達がこのような事をしているかから、お話せねばいけませんね」
 そう言いながら、鷹通は幸鷹にソファを勧めた。
 促され、幸鷹は再びジェイドの横に少し怪訝な顔をしながら座った。友雅は相変わらず壁に凭れ
たままでこちらを傍観している。
 ソファの正面に置かれたテーブルを挟んで、鷹通が反対側に腰を下ろした。

「私と、藤姫、そして翡・・ジェイドさんは、『この世界』の人間ではありません」
 突拍子もない言葉に、友雅と幸鷹は、きょとんとした顔で三人を見詰める。

「時代で言うならば、きっとここよりは昔なんでしょう・・・」
 『そこ』は、この世界にとてもよく似た、だがしかし何処か違う感覚を持ち合わせた世界。龍神を祀
る思想があり、その龍神に仕える神子がいるのだという。

「・・・巫女ねぇ?」
「こちらでいう、シャーマンという意味での巫女とは少し違いますわね」
 友雅に向かって藤姫は微笑んだ。
「どちらかというと、ゴッドチャイルド・・・神力の代行者という方が正しいですわ」

 その世界に、ある日を境に怨霊が発生し始めた。
 ものが豊かになれば、邪険に扱われるものも増えてくる。そうしたもの達の怨念が、徐々に増え始
めたのであろうと、神子は言ったという。

「怨霊・・・・幽霊みたいなものですか?」
「どうかな、こちらの世界でいう幽霊とは死者の魂のことだろう?」
 ジェイドは表情を変えず幸鷹に答える。
「怨霊は・・・どちらかと言えば聖霊、『もの』に宿る魂に近いかな?」
「そうですね、『もの』も時間をかければそれなりに心が生まれます」
 付け加えられた鷹通の言葉に、幸鷹はますます疑問が生まれる。『もの』に心が生まれるというの
が、よく理解出来なかった。
「まぁ、猫が100年生きれば『猫又』になる、という言い伝えみたいなものかい?」
 友雅は気楽に答えた。そうですね、と鷹通も微笑む。

 理屈が伴わないと頭の固い幸鷹だけが、うーんと悩む姿が暫し続き、それをジェイドはくすくすと
笑いながら眺める。

 神子と、その神子に仕える八人の者が怨霊を鎮めるために奔走したが、最初は一つ二つだった怨
霊も、日増しに酷くなる一方であった。

「私も、翡翠殿・・・ジェイドさんも、その八人の一人です」
「好きで選ばれた訳でもない上に、過剰労働で参ったよ」
「翡翠殿」
 鷹通に諭され、はいはいとジェイドは片目を閉じた。

 そんなある日、鏡に宿った怨霊に神子が囚われた。
 そして、その力を分断されてしまったのだ。

「分断された力は、鏡の怨霊に入り、時空を越え、こちらの世界に飛んでしまったのです」
 力さえ取り戻せば、神子は自力で鏡の呪縛から逃れることが出来る。そこでこちらの世界に渡っ
て、回収することになったのだ。
「・・・つまり、君たちは鏡越しの世界の人間だと?」
 はい、と鷹通は友雅の問い掛けに頷いた。
「神子の力がなくなった分、私達『護り手』の力も個人差はあれ、影響がありました」
「ある程度の力が残っていたのが鷹通と私だけだったから、二人でこちらへ取り戻しに・・・・という訳
だ」
 ジェイドが面倒臭そうに答えると、幸鷹はふぅと溜息を吐いた。
「では藤姫、君は鷹通達とは違うのかい?」
「はい、私は取り戻した力を神子にお返しする・・・いわば橋渡しの役目で一緒に参りましたの」
 なるほどね、と友雅は頷いた。
「『力』は古き良き物に憑き易い。この世界に飛んだ『力』は様々な絵画や骨董品などに宿ってしまっ
たのです」
 鷹通の言葉で、ようやく幸鷹は白虎がランダムに盗みを働く理由が判った。
「・・・・・・・・それで、美術品を・・・・」
「最初は、力だけを抜くつもりだったのですが・・・翡翠殿・・・・ジェイドさんがいなくては、それも侭な
らず・・・持ち帰りました」
「ジェイドがいなくては・・・・とは?」
 幸鷹はそう訪ねながら、ちらとその当人を見遣る。眼が合った途端、小さくウインクされ思わず眉
を顰めた。
「八人の中で、『回収する能力』があるのは私だけだからね・・・だから、過剰労働させられていたん
だよ」
「ちなに私は『見出す』力です」
 今は幸鷹さんに移ってしまいましたが、と鷹通は付け加えた。

 他にも、力を具現化させることが出来る者。音楽にのせて送ることが出来る者。武器そのものとし
て利用出来る者。
 様々な力を持つ八人の護り手がいるのだという。

「回収に困っていた私に力を貸してくださったのが、ミソノさんとユカリさんでした」
「・・・・・・・・・・あの二人・・・」
 幸鷹はやれやれと心で呟いた。
「何でも、幽体などは鉱物や水分に憑き易いのだと言って、素材を探していただき、花まで作ってい
ただきました」
 花の形にしたのは、深苑曰く、何枚も花弁を重ねることで、より吸収しやすく改良した結果らしい。
「・・・・深苑くんは化学、紫さんはオカルトが得意分野ですからね」
 二人がタッグを組めるような面白い材料が、揃ってしまったのだろう。 賢い双子ではあったが故
に好奇心が旺盛で、幸鷹も何度となくヒヤヒヤさせられているのだ。
 インターネットから暴力団のセキュリティに入り込み、データを破壊出来るか・・・というゲームを二
人でやっているところを、幸鷹が必死で阻止したのはまだ記憶に新しい。
 少しは公僕たる親戚の立場も考えて欲しいと、何度諭した判らないのに、今回はよりによって怪盗
の手伝いをしているとは。
「・・・・・少々、お仕置きが必要ですね・・・」
「・・・・・・・・?どうかされましたか」
「いえ、話しの続きを」
と幸鷹は促し、今の思いはまた後で考えることにした。

「ただ、世界を越えたはずみで、今まで私や藤姫は記憶に障害が出てしまっていたようです」
「多少のことは覚悟しておりましたの・・・自分の事や使命などは予め強く暗示を掛けておいた筈なの
ですが・・・・」
 はぁ、と溜息をつきながら、藤姫はじろりとジェイドの方を見た。
「まさか、翡翠殿が使命を放り出しているとは思いませんでしたわ」
「私だって今までやりたくもない事をさせられてきたのだから・・・たまには自由を楽しみたかったのだ
よ」
 降参すると言うようなポーズを取ると、ジェイドは言葉を続けた。
「それに・・・『こちら』に来た時には、『護り手の証』が消えていたのだからね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・な、何ですって?!」
 今度は鷹通が声を荒げた。
 ジェイドは着ていた紫のシャツのボタンを2個外すと、
「ほら」
鎖骨の間辺りを鷹通や藤姫に確認させるように見せる。
「では・・・どうやって捕らえれば・・・・」
 はー、と鷹通は深い溜息を吐いた。
 ジェイドは何かを思い出したように立ち上がると、ダイニングカウンターに乗せたカメラを手に取り
構えた。
「このカメラ、光ってみえなかったかい、刑事さん?」
「・・・・・えぇ、薄く赤色に光っています」
 突然レンズを向けられ、幸鷹は戸惑いながらも自分の見たままを告げる。
「・・・これで見るとね、ちょうど刑事さんの首筋辺りにぼんやりとした光が見えるんだが・・・」
 そう言われて、幸鷹は慌てて自分の首を隠すように両手で覆った。その姿に、ジェイドはくすくすと
笑いを漏らす。
「つまり・・・これがあれば、回収できそうだね」
「・・・・・そうですか」
 ジェイドの答えに、鷹通はほっと胸を撫で下ろした。

 幸鷹はこの突拍子も無い話を一気に理解することなど不可能であった。
 『鏡の世界の住人』などと、とても信じがたいことばかりだが、ここまで同じ顔がいくつもあり、自分
自身にも眼に見えて不可思議な出来事が起こっている。
 理屈で割り切れない、だが、どこか筋の通った話に、頭は必死でついて行こうとしていた。

「なにやら、大変みたいだね」
 友雅だけが、蚊帳の外気分でこの光景を眺めていたのだが。








2004.10.13 

申し訳ない!
今回、説明文ばっかだ・・・

完成したら、修正します。
読みにくいよぅ・・・





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