Rebersible Man 28




 鍵を開け扉を開くと、部屋の中は真っ暗であった。
 当たり前か。誰もいないのだから。
 ふとそんなことを思うと、玄関のあかりを灯し、靴を脱いで部屋に入る。リビングダイニングの電気を点
け、そのままベランダ窓に引かれたカーテンの隙間をきちんと閉めた。
 が、もう一度その隙間を開き空を仰ぎ見る。
 薄く雲がかかって、月も星も霞がかってぼんやりと夜空に浮かんでいた。
 少し、窓越しにひんやりとした空気が伝わってくる。
 まだ秋口だというのに今夜は冷えるな。
 そんなことを思いながら、幸鷹は再びカーテンをきっちりと閉めリビングのソファに腰を下ろした。

 疲れた。

 力が抜けた途端、まず思うのはそれであった。
 ネクタイを弛めながら、シャツのボタンを一つ、また一つ外した。
 思い出したように、徐に右の首筋に手の甲を当ててみる。固い感触に、今日の出来事が夢でなかった
ことを確定していた。

 鏡の世界。
 不思議な力。

「力を集めるのに、協力してください」
 鷹通の眼は真剣だった。
 ジェイドが言うように、確かに鷹通にとってはあの使命が総てなのだろう。自分が持っていた力を、不
本意ながら他人に譲ってしまった彼は、もどかしいに違いない。
 だが、彼の正義と自分の正義は明らかに違っているのだ。
 彼の正義を貫けば、自分の正義は貫けない。

「それは君の事情だ」

 ジェイドの言葉が、ふと過っていった。
 言われなければ、気付かなかったかもしれない。
 今まで自分のしてきたことが、この国の法に乗っ取った揺ぎ無いものだと思っていた。だがそれは、自
分の中にしかない事情なのかもしれない。
 それでも、その事情を捨てることは、自分を捨てることになる。

 カメラのシャッターの音が、未だ耳について離れない。
 幸鷹は、はぁ、と溜息を落とす。

 もう、これが一番の策なのかもしれない。
 そう思うと、幸鷹は軽く目を閉じた。





2004.11.04


なんだ、
このモノローグは(苦笑)







NEXT

ウインドゥを閉じてください

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送