Rebersible Man 3





「兄様・・・・わかりましたわ・・・・」
 少女は両掌にすっぽりと納めまる程度の透明な硝子珠を、真摯な眼差しで見詰めながら呟いた 
「・・・ん、では私は『華』を創ろう」
 その隣で見守っていた少年も同じように真剣な顔で頷いた。
「わかりましたか?」
 その様子を背後から眺めていた鷹通が訪ねると、長い髪をふたつに束ねた優しそうな少女と、後
頭部で高く髪を結い上げた利発そうな少年は、振り返りながら首を縦に振った。
 恐らく双子だろう、同じ顔がふたつ並んでいる。
 実は鷹通自身もこの二人のことは然程詳しく周知している訳ではない。だが、まだ十歳くらいの風
貌なのに、その物言いや振る舞いは今時の学生よりも大人びている。

 同じ顔。

 そう思ったと同時に、鷹通は先日の出来事を思い出した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 自分とまったく同じ顔の人物。
 しっかりとスーツを着こなし、落ち着いた物腰から、少し自分よりも年上のようにも感じる。
 鷹通も驚いたが、向こうの顔もまた困惑を隠せない様子であった。
 自分と同じように眼鏡をかけ、肩程度に髪を切りそろえた厳格そうな面差し。同じ顔であっても、滲
み出るものは違うのであろう。
「・・・・・名前くらい・・・聞くべきでしたか・・・」
 ぽつりと、誰にも聴き取れない程度の声で呟く。

「どうかされましたか?」
 微かに聞こえた声に振り返った少年と少女に、
「いえ、何でもありません・・・それより、ユカリさん、ミソノさん、今回の目的は・・・?」
何事もなかったように問い掛けた。
「今回は、こちらでございます」
 ユカリと呼ばれた少女が差し出した硝子珠に目を凝らすと、薄らと何かが浮かび上がる。
「こちらの・・・・真珠でございます」
 大きさの程は判らないが、殆ど真丸の容といい、微かに生成りがかった上品な艶といい、これもま
た極上の品のようであった。
「・・・・真珠・・ですか・・・・」
「そうだ、一刻も早く手に入れねば」
 淡々と言い放つミソノに、鷹通は逆に少し戸惑う。
「今から『華』を創る・・・出来上がったら、早ければ・・・今夜決行してもらいたい」
「・・・・・・・・・・判りました」
 少し間が空いて、鷹通は答えた。

 クローゼットの中から、真っ白な細身のシャツと、黒の細身のパンツを引っ張り出す。
 これに袖を通す瞬間は、いつも惑いが無いといえば嘘になった。

 何しろ、人様のものに手を掛けるのだ。
 自分の性格上、他人のものを掠め取るなど考えたこともなかった。
 だが。

 これは、やらねばならないことなのだ。

 それならばせめてと、予告状を出し、自分の姿も暗闇で見えるように白いシャツを選んだ。
 盗むことには違いないが、せめてこそこそとせず、真正面から行こうと。

 ただし、『怪盗 白虎』と名前をつけてしまったのは・・・・・
「だって、お名前があったほうが素敵ですわ!!」
最近、探偵マンガにすっかりご執心なユカリの、強引な押しであったが。

 下手をすると白いタキシードを着せられてしまいそうになるのを、鷹通が必死で断ったのは言うま
でも無い。

「・・・・・・出来た」

 ミソノが差し出した牡丹の造花を、鷹通は黙って受け取った。

「お気をつけて」
「しっかりな」

 真っ白な手袋を両手に通すと、
「・・・・・・・・・・・・・行きます」
鷹通はベランダへと足を運んだ。







2004.9.22 

・・・・・・・怪盗 白虎。

我ながらセンスサイテー(カラ笑)







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