Rebersible Man 4






「・・・・・・・・も少し、目線下げて」
 カシャ、カシャ、とシャッターの音が響く。
「そう・・・・そのまま左へ顔向けて・・・」
 撮影スタジオに持ち込まれた、大きな黒い皮張りのソファに友雅は体を預ける。
「こちらに手を差し出して・・・・・・そう・・・」
 言われるがままに、何度もポーズを変える。
「・・・目線、こっちへ・・・・」
 正解だと、思わずレンズに微笑んだ。
「・・・・・・笑わないでくれまいか・・・」
「あぁ、すまないね」
「・・・・・・・・少し、休憩を入れよう」
 そう言いながらジェイドは首からカメラのストラップを外す。

「なんで、私を撮ってくれる気になったのかな?」
「・・・・・・・・自分から依頼しておいて、それはなかろう?」
 友雅から差し出された紙コップを、ジェイドは苦笑いしながら受け取った。
「何しろ、君は風景や静物専門で、人物は滅多に撮らないと聞いたからね」
「それを知っていて、依頼してくるのはさすがだがね」
 ジェイドは真っ直ぐに伸びた長い髪を、少し鬱陶しげにかき上げた。
「簡単に言えば、好奇心だよ」
「・・・・・ふぅん・・・・それは、君と私が似ているからかい?」
「・・・・そうだろうね」
 似ている。友雅はあえてそう言ったが、実際顔を合わせてみると『似ている』という言葉では片付け
られない程、瓜二つであった。
 スタジオで初めてジェイドを見た瞬間、友雅は一瞬あっけに取られたものである。
「自分にレンズを向けているようで、おかしな感覚にはならないのかい?」
「別に・・・被写体は被写体だからね」
 その言葉に友雅は、この男でも自分の満足の行く写真を撮ることは出来ないかもしれないと思っ
た。

「・・・では、現像の連絡などは事務所にさせていただくよ」
「あぁ、頼むよ」
 片付けをアシスタントに任せて、一度部屋を出て行く背中に、
「ジェイド」
友雅は声を掛ける。
「・・・・・どうかしたのかな?」
「君さえ良ければ、今度飲みにいこうか・・・・私も君に興味が湧いたよ」
 にこりと微笑む友雅に、
「美女が付くなら、考えてもいいかな?」
 これまたにこりとジェイドは微笑んだ。


 スタジオの駐車場から車を出すと、ジェイドはそのまま自宅へとハンドルを向ける。夏の終りとは
言え、今日は少し蒸し暑い。運転席と助手席の窓を微かに開けると、外の空気が心地よかった。
 『T』は面白い男だったと思うが、残念ながら被写体としては自分の心は動かさない。

 信号が赤に変わる。この信号は一度掴まると5分くらい動かないことを思い出す。
 やれやれ、と窓枠に肘を着いた。

 海のような人間に会いたい。
 時に光差す穏やかな水面のように。時に風に突き動かされる波のように。ファインダーの向こうを
何度覗いても、決して見飽きることのない世界。
 ジェイドが海に囚われるのは、そういった自分を飽きさせず、しかも創られた世界ではない、そうい
うところなのだ。
 そんな人間に会いたい。無理だとは判っているが。

「・・・・・・だから、無駄なことだと言っている!!」
 突然飛び込んできた、自分の考えを否定する声に、思わずその方向を見ていた。
 歩道を歩く男が、携帯でなにやらやりとりをしているようである。
「もういい、その話は!!とにかく今から現場に向かう」
 声の主はすごい剣幕で終話ボタンを押すと、ぱたんと携帯を折りたたみポケットに突っ込む。その
姿を、ジェイドは思わずまじまじと眺めていた。

 きっ、と正面を向き直った顔はとても冷静な様子で、先程まで怒鳴り声を上げていたとは思えな
い。

 綺麗な横顔だと、思った。

 ジェイドの目の前をその横顔が、急に左から右へに走り出す。反対車線に渡ったかと思うと、どん
どん後ろにその姿が遠ざかっていった。

 信号が青に変わる。

 何故だか、ジェイドはその交差点で車をUターンさせていた。







2004.9.22 

どーも前書いたジェイドネタが
スキみたいッス・・・私。

しかし、ストーカー?

そのうち縛り目隠しプレ(以下自主規制)




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