Rebersible Man 9






 幸鷹がドアを閉めたと同時に、ブォンという大きなエンジン音が響く。
 男は素早くギアを入れ替えると、ハンドルを大きく回転させ車を発車させた。
「・・・・・・・・・・・っ・・・」
 車体の回転につられて、幸鷹の身体も大きく揺れる。慌ててシートベルトを締めると、フロントガラ
スの上の方に見える小さな白い影を眼を細めて確認した。
「どうやら間に合ったみたいだね」
「・・・・・・・・・・えぇ」
 相槌を打ちながら、余裕の笑みを浮かべる運転席の男の存在を、幸鷹は改めて分析する。

 年齢は、20代後半位だろうか。男にしては珍しいくらいの長い髪。だが、それが妙に様になってい
る。つまり、見目良い男な訳だ。濃紺のシャツと黒合皮のパンツ。ラフな服装だが、決してみすぼら
しくはない。
 後続を確認するふりをして、後部座席をちら、と見ると、シルバーのボックスが2つ積まれている。
その横にあるのは
「・・・・・・・貴方は、マスコミの人間ですか?」
望遠レンズがセットされた、明らかに素人には思えないような厳ついカメラであった。
「マスコミ・・・・と問われれば、そうとも言えるね」
 さらりと聞き流すように答えると、ハンドルを握る指を軽くとんとんと動かした。
「だが、報道カメラマンではありませんね」
「・・・よくご存知だ」
 再びグライダーを確認する助手席の人物に、ジェイドは思う以上に感心する。この瞬時に、今得る
ことの出来る情報を収集してしまったのだ。どうやら頭の回転はかなり速いらしい。
「あんなところにいたのは何故ですか?そして、私を乗せたのも・・・」
「そんなに一度に責めないでもらいたいね・・・まずは自己紹介くらいあっても良いと思うのだが?」
 そう言って、ハンドルを大きく右に切った。
「・・・・・わ・・・・・」
 急にかかる重力に、幸鷹は思わず窓ガラスに頭をぶつけそうになる。
「おや、すまない」
「・・・・・・・っ・・・・・」
 本当にすまないと思ってなどいないだろうと、突っ込みたくなるような素っ気無い言葉であった。

「私は、ジェイド・・・お察し通りのカメラマン・・・ただし、広告やファッション専門の、ね」
 その言葉に、幸鷹はなるほどと思った。
「・・・私は・・・藤原・・・幸鷹・・・・」
「刑事さん?」
「・・・・・・まぁそんなところです」
 曖昧な返事でも、ジェイドは何も言わずに、そう、と呟いた。
「何故、あんな場所にいたのですか?あの周辺は厳戒態勢だった筈です」
「・・・・ちょっと、探し物をしていたんだよ」
 胡散臭い答えではあったが、あまり追求するのも何かと思いながら、幸鷹は次の質問を振る。
「私を乗せたのは、何故ですか?」
「・・・・利害の一致、というところかな?」
「・・・・・・・・・・?」
 更に胡散臭さが増す答えに、幸鷹は怪訝な顔をする。
「君は、あれを追いかけたかったのだろう?」
 そう言いながらジェイドが目配せする先には、屋根に掠りそうな際を飛ぶ小さなグライダーのシル
エット。
「私は、君に丁度頼みがあったのだよ」
 その言葉に、
「・・・・・頼み?私にですか?」
一瞬だけジェイドを見遣るが、すぐに幸鷹の目線はグライダーを追う。
「一体、私に何を・・・」
言いかけた瞬間、

「・・・・・・・?!・・・落ちる・・・・・!」

 目の前のグライダーが、何かに引っ掛かるように、がくんと沈んだ。





2004.10.02 


ハァ。
ストーカー度
増幅気味?(笑)






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